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ブラジルの大地に息を吹き込んで
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「世界中でも貧富の差が大きい」というブラジル。16世紀から19世紀まで続いた奴隷制度時代の名残ともいえる「大土地所有制」――ほんの一部の大地主が広大な土地を独占している構図が、貧富の差が縮まらない要因のひとつだ。そんな中、土地を持たない農民が合法的に土地の所有権を得るために、大地主の所有地を占拠し交渉する「MST(土地なし労働者運動)」が各地で起こり始めている。
その中の一つ、「自由の土地」という意味を持つ“テハ・リブレ”を訪れ、コミュニティーの人たちとの交流を楽しんだ。
リオデジャネイロの市街地、ところ狭しと並ぶ高層ビル群を抜けると、それまでとは対照的なスラム街が目に飛び込んできた。このスラムは、土地を持たない農民たちが都市に流入してできたところがほとんどだという。郊外へ向かうこと約2時間半、辺りがすっかり農村地帯になったところで、ふいにバスが止まった。少し前に降った雨でぬかるんだ道に、バスがはまって動けなくなってしまったのだ。結局、のどかな農村風景の中、歩いてコミュニティーへ向かう。
コミュニティーでは、「MST」の活動内容や“テハ・リブレ”を形成するまでの経緯を聞いた。その後、現地の人たちからのリクエストで、みんなで自己紹介大会。私たちを「コミュニティーの一員」として迎え入れてくれた。「他の国の人たちが自分たちの活動や状況を知りに来てくれてとても嬉しい。ここを本当の我が家と思ってくつろいで欲しい」。
日本から持ってきた紙風船や折り紙などで、子どもたちとの交流が始まった。中にはプレゼントしたサッカーボールでさっそく遊び出す子も。遠い国から来た私たちを家族のように迎え入れてくれる人々や、初対面でも屈託のない笑顔で近寄ってくる子どもたちの姿に、緊張していた参加者たちも馴染んでくる。最後には、すっかりアットホームな雰囲気になった。
まだまだ遊び足りない、という顔をする子どもたちとも別れ、コミュニティー周辺を案内してもらった。みんなで種の植え付けを体験したり、小学校や耕作地などを見学したりすることで、地域の様子だけでなく、人々の暮らしもかいま見えた、ような気がした。
1998年に入植してから4年。土地を求める彼らの闘いはまだ続く。けれど“テハ・リブレ”という言葉が意味する「自由の土地」の実現に向かって頑張る彼らのパワーをひしひしと感じた一日だった。
(大島美千代)
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