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ファベーラに響く未来へのリズム
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ブラジル都市部の人口のうち、その15〜20%が「ファベーラ(スラム地区)」に住んでいるという。「ファベーラ」は、もともと職を求めて農村部からやってきた人たちが、人が住んでいなかった「空き地」、特に丘の斜面に住みついたのがはじまりだ。
失業率は約50%にのぼり、ここで暮らす子供たちは、その貧困から将来に希望を抱けず、犯罪に走るケースも多いという。ここでは、音楽やダンスなどを通して夢や目標を持つことを教え、子供たちの目を犯罪以外に向けようと活動しているNGO「アフロヘイギ」を訪問。ファベーラの家並みを目の当たりにし、また「アフロヘイギ」の活動を知ることで、未来を担う子供たちが将来の希望を抱くことの大切さ、そして「アフロヘイギ」の果たす役割の大きさを実感する1日となった。
リオデジャネイロの観光ポイントの一つ「イパネマビーチ」から、数本裏の道に入ったところに、今回訪問したファベーラ「カンタガーロ」への入口がある。ここに人が住み始めたのは約80年前。今では隣のパバウンジーニョのファベーラと合わせると、約15,000人が住んでいるという。
丘の上でまわりを見渡すと、目の前にはビーチや湖・立ち並ぶ高層ビルという美しい風景が広がり、振り向くと丘の天辺に近いところまで、斜面にぎっしりと建つファベーラの家々が目に入る。ブラジルの抱える貧富の差を間近に見た瞬間だった。
ファベーラの住民たちは、自分たちの生活をよりよいものにしていこうと、自治会のようなものをつくった。それが「住民組織」を呼ばれるものだ。その代表の方にファベーラを案内してもらった。
「住み始めたときには、ここは木造の平屋だった。その家を、2階を造り、次はレンガ造りに建て替え、徐々に住みやすくしていったんだ」という説明を聞いた。しかしよく見ると、ほとんどがレンガ造りの家。つまり、ほとんどの人がレンガ造りの家に建て替えられる程、長くここに住んでいるということ。住民組織の主な役割は「市との交渉」で、その成果として、丘の上に住む人たちの足となる無料のゴンドラが設置されたり、水道・下水道・電気も整備されたのだとか。
カンタガーロ文化センターには、20の団体が活動しており、その一つがNGO「アフロヘイギ」。彼らは市役所とパートナーシップを結んで、音楽・ダンスなどを子どもたちに教えており、今回は、その活動の一つであるサーカスを披露してもらった。
生き生きとした表情で技を見せてくれる子供たち。しかし、アフロヘイギの目的は、子供たちを教育することだけではなく、音楽やダンスの内容は「ファベーラの現状」であり、これらを披露することで、ファベーラの現状を多くの人々に知ってもらい、また、住民たちの意識を高めることで、暴力や差別のない生活環境を築き上げていこうという考えを持っているのだそうだ。
昼食後はお互いの文化交流。ブラジルならではのサンバを教えてもらったり、カポエラを指導してもらったり。
もともとカポエラは、黒人奴隷制時代に練習していた格闘技の一種だった。しかし、白人たちに「格闘技」だと分からないように、ダンスとして練習していたため、ダンスと武道が融合されたものとなったのだとか。こんな文化の説明からも、ブラジルの歴史が感じられて興味深い。 ピースボート側からは歌や折り紙、あやとりや習字などを教えたりして日本の文化を伝える。
「アフロヘイギ」は、今年で10周年を迎える。この写真で叩いているのは太鼓代わりのドラム缶。そのパワー溢れるステージはとてもかっこいい!アフロヘイギは、歌や演奏だけでなく劇なども披露しており、今回見た劇は「乳ガン検診を受けよう!」というメッセージを人々に伝えるものだった。
こういったパフォーマンスを通じて、健康や病気の知識・その予防法をファベーラの各地で教育する役割を担っているのだとか。子供たちのためだけの活動でなく、ファベーラの「未来」全体を見据えたその活動はとても力強く印象的だった。
(飯田俊介、寺田満実子)
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