UPA国際協力プロジェクト・ベトナムスタディーツアー
 支援物資を寄港地に届け、交流活動を行っている「UPA国際協力プロジェクト」。ベトナムではオリビア号から一時離脱、スタディツアーを行った。
 現在ベトナムには約5万人のストリートチルドレンがおり、現在も増えていっている。それだけではなく、ベトナムが経済的に発展していく一方で経済格差も広がり、職をなくしたり、ハンディキャップを負っていたりという親が子どもの面倒を見られなくなる、というケースもある。
 私たちUPAは、フエ「子どもの家」等、ストリートチルドレンのため施設を訪問し、支援物資を子どもたちに届けると共に、彼らと交流をした。
--「子どもの家」--
 「子どもの家」はベトナム中部の古都・フエ市において、ストリートチルドレンの自立支援活動に取り組んでいる団体だ。創立してから8年、現在はストリートチルドレンや経済的に生活が困難な家庭の子ども等、さまざまなバックグラウンドを持つ60名の子どもたちがここで暮らしている。
 この職業訓練所ではミシンや刺繍、コンピュータを学ぶこともできる。しかし、人数が多すぎても充分なケアができなくなるということで、現在7名が順番待ちの状態だそうだ。しかし、中には子どもが施設に入ると家の働き手が減るということで、入居を拒否する親も少なくないという。
 UPAが今年の5月に届けた「手動浄水機」を見学させて頂いた。「ベトナム『子どもの家』を支援する会」事務局長の小山道夫さんからは「届けっぱなしではなく、何か弊害がおきていないか、どう使われているのかを自らの目で確かめているということは非常に大切です」という言葉をいただいた。今回も、UPAは日本で集めた文具や楽器を届けたが、これらは「子どもの家」でおこなわれている教育プログラムなどに使われる予定だ。
 「子どもの家」は障害児支援にも取り組んでおり、そのひとつ「障害児医療センター」では、車椅子の支給・リハビリ指導をおこなっている。私たちは昨年9月、UPAで届けた車椅子を使用している家庭を訪問した。写真の男の子の名前はバンくん。彼は話すことができず、排尿も補助が必要な状況にある。彼のお母さんは「車椅子をもらう前は外に行くときはおんぶしなければならなかった。けど今は外出も多くなった」と、微笑んでバンくんの髪をなでた。
 子どもたちとの食事風景。このあとも、ダンスやサッカーで一緒に遊んだ。言葉は通じないけれど、パワフルな子どもたちに圧倒されっぱなし。「子どもの家」では、18才になったら社会へ出ていく。しかし、就職難のベトナムでは、職にたどりつくことはそうそう簡単ではないという。そんななかでも、子どもたちは「将来は困っている人を助けたい」と言っていた。
--「ダナンストリートチルドレンセンター」--
 1991年に設立された、ダナンで唯一のNGO「ダナンストリートチルドレンセンター」を訪問。ここでは、子どもたちの生活環境に合わせて、職業訓練や基本的な教育、奨学金など7つのプログラムが設けてあり、計750名の子どもたちがなんらかのプログラムを受けている。
 ストリートチルドレンセンターにはいくつか「職業訓練」をおこなっているプログラムがあるが、その中のひとつ「ハンズ オブ ホープ」を訪れた。ここはゴミ集積所の近くにある建物だ。ゴミを拾いリサイクルして生活していた子どもたちがここに通っている。当初はゴミを集めるための道具を渡していたが、今はそれを見直し別の職業の斡旋をおこなっているそうだ。
 ダナンストリートチルドレンセンターには「トゥモロークラブ」という施設もある。ここでは、ソーシャルワーカーが経済的に困難な家庭やストリートチルドレンに声をかけ、ここに連れてきて勉強を教えている、「児童会館」のようなもの。子どもたちは、夜になると「シェルター(宿泊施設)」に泊まったり、あるいは路上に戻ったりもする。この絵は、以前画家が絵の指導に来ていた時に子どもたちが描いたもの。どれも色鮮やかな絵ばかりで、元気いっぱいの子どもたちを象徴していたように思う。
いくつかの施設を廻ってわかったことは、子どもがこの施設に来る理由はほんとうにさまざまだということ。そして「ストリートチルドレン」という一言で彼らをくくることはできないということ。沢山の交流を通して、人のあたたかさに触れたと同時に、出会った一人一人の人と、また出会いたいと思った。今後もUPAは継続的な支援をすると共に、彼らとの交流を続けていきたい。
(小林由佳)
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