ストリートチルドレンセンター訪問
 港から車で約40分。そこに、ダナンで唯一のNGO「ダナンストリートチルドレンプログラム」の事務所がある。このコースでは、センターの子どもたちがひとつの「家族」として集団生活をおくる「ファミリー」や、彼らがやがて自立して生活していくための職業訓練所を訪問。また、手作りのお手玉やクリスマスカード・文房具などを自分たちの手でセンターに届けることで「助け合うこととは?」ということを考えるきっかけになると同時に、一緒に遊んだ子どもたちの表情がいつまでも心に残る交流になった。
 まずはセンターの事務所へ。船内で袋詰めした文房具やぬいぐるみ・楽器の紙袋が机の上いっぱいに並んだ。これらはいったんこの事務所に集められ、ここからそれぞれの子どもたちに届けられるそうだ。
 スタッフのマンさんの話によると、ここでの子どもたちの衣服代や食費などを含む資金は、すべて、旧宗主国フランス・日本・アメリカ・カナダなどの市民団体からの募金、または個人の寄付でまかなわれているという。今回は、センターが実施しているさまざまなプログラムの中で、子どもたち30人をひとつの家で受け入れて「家族」として暮らしている「ファミリー・プログラム」、そして2ヶ所の職業訓練所を訪れる。
 私たちはグループに分かれ、「ファミリープログラム」を実施している家庭を訪問した。「ストリートチルドレン」と一口で言っても、親から離れて路上生活をおくる子、親のいない子、家の経済的事情でこのセンターにいる子など、その事情はさまざまだ。ここではそのような子どもたち約30人をひとつの「家庭」で受け入れ、「家族」として暮らしている。
 ベトナムの学校は午前・午後に分かれている。ちょうどお昼頃にファミリーを訪れた私たちを待っていたのは、午前クラスを終えて帰ってきた子どもたちと、彼らの世話をする「お父さん」と「お母さん」だ。ベトナム料理をいただきながら、さっそく子どもたちからベトナム語を教わったり自己紹介しあったりという交流が始まった。この男の子の名前はドゥックくん。将来はサッカー選手になりたいという彼の部屋には、フランス代表選手・ジダンのポスターがはってあった。
 センターには、このような「ファミリー」が5つある。今回はそのうちの4つを訪れ、それぞれお手玉やサッカーなどのテーマを決めて交流。その中のひとつでは、日本の子どもたちに描いてもらったクリスマスカードを届け、ここではベトナムの子どもたちにカードを描いてもらおうというもの。描いてもらったカードは日本に持って帰り、今度は日本の小学生に手渡す予定だ。子どもたちの絵は、気温30℃をこえるベトナムらしく、太陽や木々、果物などの色鮮やかな絵が多かった。
 市内にある職業訓練所。ここは「刺繍部門」「パソコン部門」「裁縫部門」「電機部門」などに分かれている。パソコンの教室にいるのは女性ばかりで、10台あまりのパソコンに向かい、ワードやエクセルなどを使ってそれぞれの課題に取り組んでいた。彼女たちは16〜17歳。3ヶ月ほどかかって基本的な扱いを覚え、それで「卒業」となる。
 市街地を通り抜けて、田園風景が広がる村へ。もうひとつの職業訓練所では、子どもたちが2つのクラスに分かれてベトナム語の授業中。7歳〜14歳くらいの子どもたちが混ざって、一緒に授業を受けている。ここにいるのは街中でゴミを拾って暮らしていた子どもが多い。ここは食事もでき、勉強もできる「学校」兼「寮」のような場所なのだ。センターのマンさんによると、彼らは16歳になったときにセンターのスタッフと「将来なにをやっていきたいのか」と話し合い、17歳で本格的に就職活動を始めるのだという。
 最後のお別れの時、スタッフのマンさんはこうも話してくれた。「海や山などで観光もできたはずなのに、子どもたちに会いに来ることを選んでくれてありがとう。ここで見たもの、そして、この子どもたちのことを、ずっと忘れないでいてください」。
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