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地球大学ブエノスアイレス
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経済危機の中にあるアルゼンチン。銀行に人々が殺到していた光景はまだまだ記憶に新しい。世界銀行のスタッフから聞く今後の対策、そして失業とインフレの中で、生活の立て直し・人間としての尊厳の回復を目指す団体「テレサ・ロドリゲス・ムーブメント」の活動現場を訪ねた。
ブエノスアイレスの繁華街、フロリダ通り。一見、経済危機とは思えない賑わいを見せていたが、大手銀行が並ぶ一画は2001年12月19日の預金封鎖に抵抗した暴動の跡を生々しく残していた。どの銀行の入口も鉄板で閉ざされたまま、ペンキで書かれた落書きが当時の抵抗の激しさを示していた。
経済危機は国民のほとんど全てに経済的・精神的なダメージを与えた。中でも貧しい人たちへの影響が深刻だ。世界銀行は、政府と協力して食糧や医療・教育の支援プログラムや失業対策などを進めている。ここで話してくれたのは、世銀のスタッフで地域経済を担当しているジャニーナさん。彼女は、もともと豊かではなかった地域の経済をどうやって建て直していこうか、日々取り組んでいる。
政府に対する抗議運動の犠牲となった女性の名からとった「テレサ・ロドリゲス・ムーブメント」。継続的に活動していくために、グループでパン屋や食堂も経営している。そのひとつ、鉄道線路脇にある食堂で昼食をいただいた。メニューは豆や野菜を中心にしたもので無料で提供される。
ここは、政府所有の元・倉庫だが、市民のものとして有効利用するために、彼らが「占拠」したところ。あちこちに貼ってあったチェ・ゲバラの写真が印象的だった。
彼らの活動は「ピケテロ」と言われている。幹線道路などを遮断して、政府所有にもかかわらず使われていない土地などを提供させていこうという運動だ。
違法とも思われる強硬な手段だが、ここでは100家族、約600人が、政府が放置した土地に自分たちの町づくりをしようとしていた。経済危機という「国」の問題を自ら変えていこうという市民の姿に、日本の私たちがやるべきことを考えさせられた1日になった。
(矢島佐世)
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