地球大学・地球温暖化と南太平洋の島々
 地球温暖化の影響の一つ「海面上昇」。この現象によって、海抜の低い南太平洋の国々では、海岸線が浸食されていくという危機に面している。サモアもそのひとつだ。このツアーでは、温暖化に対する取組みを学び、また、海岸浸食の被害にあった村々を訪問。温暖化が人々の土地・文化・暮らしにどのような影響を与えているのかを検証した。
 100年前に設立され、気象と地震の観測を続けている「サモア気象協会」。屋根と柱だけの、サモアの伝統的な建物のなかで、ツアーに同行された専門家のバイオレットさんから説明を受けた。
 「私たちの国には、温暖化を止めることはできません。だから、気侯変動に適応する道を選んだのです。具体的には『気候変動の日』をつくって人々の理解を深め、マングローブや海岸の砂を採らないように呼びかけています。また、村を回って現場の様子を見ながら堤防を作るなど、村の人達に可能な方法で安全を守る指導をしている。」
 海岸線沿いの防波堤は、大部分が日本の協力で造られた。しかも、日本からの無償提供なのだとか。実は、日本のから放射能性物質を運ぶ船は、このあたりを通る予定らしい。防波堤を日本からのお金で造ってもらったサモアとしては、それにイヤだとは言えないのだという。日本とサモアの力関係が見えてくると同時に、日本の税金がなにに使われているのかということを目の当たりにする思いだった。
 海岸侵食が著しい2つの村を訪れた。中には、1990年・91年のサイクロン(台風)によって海岸線が80メートルも後退した例もあるという。これはサオアファタ村の侵食の様子。村人が堤防を作ったのだが、砂が波にさらわれ、1年も経たないうちにこんな有様に。それでも村の人々は、何とかこの土地に住み続けられることを願っている。「土地は、私たちの文化そのものです」彼らは口々にそういった。
 冷たい湧き水をたたえたピウラ天然プール。プールの外に広がる海には、たくさんのきれいな魚たちが泳いでいる。しかし沖の方には、死んで真っ白になった大量の珊瑚があった。この「白化現象」もまた、地球温暖化の影響によるものだという。珊瑚は成長し、生きている間は魚の住処となり、死ぬとその死骸は粉々になって砂となる。サモアのビーチの砂はそうやって作られてきたのだが、すべての珊瑚が死んでしまった今、そのサイクルは崩れ、これ以上砂が増えることもなく、更に海岸侵食は進むことになる。
 海岸の様子を見学した後、サオアファタ村の人々と歌と踊りで交流した。
 私たちが船で練習していた手話パフォーマンスを披露すると、さっそく村の子どもたちがマネをし始めた。みんなすっかり打ち解けて、心温まる一時を過ごした。しかし、このままだと、この村もなくなってしまう。海岸に近い家は、すでに住む人もなくうち捨てられている。考えていた以上に深刻な海岸浸食の有様を目の当たりにして、私たち先進国の責任を改めて痛感した。
(矢島佐世、寺田満実子)
アピア寄港地レポートインデックスへ40回クルーズレポートインデックスへ