船内ニュース
9月19日 国境を越える女性たち/小ヶ谷千穂(NGO「DAWN Japan」スタッフ)
 現在、一橋大学大学院で、フィリピンを中心に国際的な労働力の移動、それをめぐるジェンダーや家族関係の変化について研究されている水先案内人の小ヶ谷千穂さん。フィリピンで訪れたNGO「DAWN」の日本支部、「DAWN-JAPAN」スタッフでもある小ヶ谷さんが、海外で働く女性たちをとりまく状況について語ってくださいました。
 「アジアでの労働移動は単身者での移動が多く、また女性がその7割を占めています。職種で言えば、たとえばフィリピン女性はシンガポールや台湾・香港でメイドや介護労働者といった、フィリピンにとどまっていたなら就かないようなキツイ仕事に就くことが多いです。そのため、確かに経済的には豊かになるのですが、それと反比例して職業の地位では下降していく、という矛盾が生じているのです。
  国内に就職口が少ないフィリピンでは、すべての人が直接的、間接的に『国外での労働』に関わっています。国外に人が出て行くだけでなく、フィリピン国内にも沢山の外資企業が入ってきているからです。 『人の移動』が『モノの移動』と違うところは、入ってくる方送り出す方の両方が、経済的にも文化的にも影響を受けるというところです。『移民』について考えるとき、それを『異質なモノがやってきた』としてとらえるのではなく、これまで当たり前だと思っていたものに違う面を見いだしていく『一つの切り口』として考えていってほしいと思います。」
(西野恵美)
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