船内トピックス(3)
 「参加資格は一切問わない」ピースボートの船旅。だからこそいろんな人が集まってくる洋上には、もちろん車椅子を使って生活している人も。そこで、「普段の生活ではあまり車椅子にふれる機会もない」という人が集まって、車椅子に乗ったり押したりを体験してみるという企画が行われた。
 まずは、電動車椅子と手押し車椅子の操作の仕方をみんなで実践。さらに、ひとりが実際に車椅子に乗り、船内の狭い廊下で動かしたり、エレベーターに乗ってみたり。あまり広くないエレベーターは、車椅子に乗った人が入るともういっぱいで、付き添いの人は乗れない。さらには、車椅子の足掛けも外さなくては入れないため、付き添いの人は足掛けを持って、階段で先回りする必要があるのだとか。
 揺れる船内では、陸で車椅子を動かすよりも余計に力が必要だという発見も。今まで気付かなかったことにいろいろ気付かされる、貴重な体験になった。
 次の寄港地ブルネイと、そこからオプショナルツアーなどで訪れるマレーシア・サラワク州の熱帯雨林についての講座。担当スタッフの高田康弘と武内里紗が、その魅力とともに、現在起こっている問題についても語った。
 「ボルネオ島の北西部にあるブルネイは、石油と天然ガスという豊富な資源があるため、世界でも指折りの『大金持ち』の国として知られています。特に、ブルネイ市内にある、黄金のドームの豪華なモスクには驚かされますね。
 いっぽう、国境をはさんですぐ隣、マレーシアのサラワク州では、先住民族の人々が暮らしていた熱帯雨林が、パーム油を生産するためのアブラヤシプランテーションをつくるために破壊されています。先住民族の人たちは、土地を奪われただけではなく、自給自足の生活の術を失って、低い賃金でプランテーションで働くしかなくなったり、さらには農薬などによって健康を害したりもしているのです。そして、この現実に大きく関与しているのが日本企業です。プランテーションで生産されたパーム油の多くが、せっけんや化粧品などに姿を変えて、日本で消費されているのです」
 最近、ピースボート洋上の「新年恒例企画」となりつつある、「新春ご長寿クイズ」。
 『名誉ご長寿』として田村さん(85)、鎌形さん(78)、仙田さん(81)、滝沢さん(90)の4名が、クイズ回答者として登場した。出題者から出される流行音楽クイズなどの「難問」に、名答、珍答が続出。会場が笑い声にわいた。
 日本国内で使われずに眠っているピアノを使って全国で演奏会を開いたり、そのピアノを世界中の国々へ届けたりといった活動をしているジャズピアニストの河野康弘さん。今回は、パートナーでジャズボーカリストの三品真美さん、長女の若きチェリスト、明佳(さやか)さん、そして長男・雅文くんのあったか4人家族による「地球ハーモニーコンサート」を開催してくれた。音楽を楽しむと共に、「音楽を通してできること」についても改めて考えさせられる夜となった。
 「この地球上が、本当に『調和』のとれた素敵な世界になって欲しい。そんな思いを込めて、今までに、ベルギー、南アフリカ共和国、モンゴル、パレスチナ、ベトナム、エリトリアなどでピアノ演奏をしてきました。音楽は言葉や国境、人種を越えて皆が仲良くなれる『神様の贈り物』。私たちは世界が平和になる事を願って演奏を続けています。皆で世界の平和を願えば、その願いも通じることでしょう」
 高校卒業後、周りの友達は大学や専門学校へ進学していく中、18歳の志村洋一は貯金をはたき、「日本一周ママチャリの旅」に出た。 「とにかく自分のやりたいことを見つけたかった」。現在、ピースボートスタッフを務める彼が、その体験談を語った。
 「当時の僕は、今からは信じられないくらい人見知りでした(笑)。でも、その旅の途中で出会ったトラックの運転手さんに、思い切って道を聞いたんです。それが僕が『変わる』きっかけでした。その運転手さんにはご飯をおごってもらったりもして…今でも忘れられない人ですね。
 この『日本一周』の旅で一番大きかったのは、人との出会いでした。いろんな人と話す中で、たくさんのことが身についたんです。ピースボートももちろん出会いの場。1日1日を大切にして、ぜひいろいろな人と出会ってほしいと思います」
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