感じる@スラム〜ブラジルで出会った子ども達〜
/下郷さとみ(フリージャーナリスト)
 ブラジル・サンパウロのスラム地区で2年間の生活を体験、ジャーナリストとしてブラジルの「光と影」を追い続けてきた下郷さとみさん。本日は、ブラジル社会にとって大きな課題の1つともなっている、路上で生活する子どもたち、「ストリートチルドレン」の問題についてお話しいただきました。
 「1998年に実施された政府の調査では、リオデジャネイロに住むストリートチルドレンの数は約1000人。けれども、実際にはもっとずっとたくさんいます。
 彼らはお金を得るために、時に盗みをはたらいたり、マフィアと関係を持って麻薬の運び役をしたりすることもあります。そのため、マフィア同士の争いに巻き込まれたりすることもありますし、驚くべきことには警官による虐殺事件さえも起こっているのです。そしてさらに、本当に悲しいことなのですが、街の大人たちもまた路上で暮らす子どもたちを疎ましがるということも少なくありません。
 路上で生活する子どもをなくすために本当に必要なのは、彼らを街から追い出すことではありません。教育などを通じて、子どもたちが路上に出ずとも人間らしい生活ができるようにする環境づくりだと私は考えています。そしてそれには周りの大人たちの理解と協力が不可欠なのです。」
信じていいの?NHK〜ドキュメンタリーの作り方〜
/渡辺武達(同志社大学教授)
 「メディアが流す情報を読み解く力」をテーマとした、渡辺武達さんの2回目の講座は、『信用できる』『お堅い』イメージが強いNHKの裏側を徹底追究。「NHKの嘘とは何か」「それでもNHKが必要なわけとは」――話は「メディアの公共性」というテーマにも及んだ。
 「世の中はTVの画面に収まるほど小さなものではありません。映像を見る時に大切な点は『何が流されて、何が流されなかったのか』、そして『いつ流されたのか』の2つです。それを常に意識していなければ、傾った報道から頭の中を作りかえられてしまう可能性もあります。
 NHKは元々軍部と政府の宣伝機関として戦前に作られたもので、現在でも政府によって圧力がかけられる場合があります。しかし一方で、民放と違ってCMがないので企業コントロールを受けないこと、国の特殊法人なので国民が抗議すれば誤りを訂正してくれること、日本全国どこでも放送することなどからやはりNHKは必要なものでもあります。
 『言論の自由』とは、単に『好きなことを言うこと』ではなく、権力者を遠慮なく批判すること、さらにはメディア上で多角的な論点を保障し、知らせる権利のことです。」
(佐藤しのぶ)
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