10月12日  ▼テロリズム:現実との直面
/クレム・マッカートニー(平和学者)
北アイルランド出身の平和学者、クレムさんは、1980年代に北アイルランドの反政府武装グループである「アイルランド共和軍」から「テロによらず目的を達成する方法を探りたい」と接触を求められたことを例に引き、「テロリストとの対話も必要」と語る。
「挑発的に聞こえる発言もあるかもしれませんが、紛争解決に携わってきた者として物事を見て、その視点で語るつもりなので、同意を求めようとするものではありません」。そんなあいさつから始まった講座の内容は――。
「テロリズムは、人々の心に不安を引き起こすことによって、社会システムの変革を目指すものです。それは何らかの目的達成の為に起こされる行動ですが、だからといって決して、暴力行為やテロ行為が正当化されることがあってはなりません。そして、これに対して報復行為に走ることは、テロに敗北することになります。
テロの目的が国際規定や法のシステムを崩壊させることである以上、断じてテロリストに目的達成の機会を与えてはならなりません。また、法的な対処は有力ですが、法的な制限によるのみでは根本的なテロ行為の解決とはなりません。テロリズムを生み出す人々の不満や悲しみに耳を傾けながら、それらの解決策としての暴力行為は否定していく。テロをなくすには、この2つのことを同時に成していかねばなりません。
人々の心にある深い悲しみや不満を、あたかも存在しないかのように否定したり聞き流そうとする私達の表面的な態度は、彼らの心に更にやり場のない深い悲しみと怒りを与えることになります。そしてその人々は、「耳を傾ける者のない」 世界に、暴力でメッセージを伝えようとすることになります。わたしたちは、これらの悪循環をこそ断ち切らねばなりません。
「敵」とされている人たちとのコミュニケーションを図る手立ても必要です。そのためには、他の社会に住むリーダーやコミュニティの人たち、あるいは国家によってサポートされた個人や市民団体が出向くことも可能でしょう。」
(小岩)
ヘルプ!!メディアが私達を“バカ”にする
ヤスナ・バスティッチ(ジャーナリスト/ピースボートスタッフ)
ピースボートスタッフであり、スイス国営放送で国際ジャーナリストとして活躍するヤスナ・バスティッチ。
今回の講座では、「メディアは社会の中でどのように機能しているか」、「わたしたちはメディアによる情報をどのように理解すればいいのか」をテーマに話してもらった。
「テレビや新聞などのメディアを作成する組織は、他の市場の一般的な会社と同じように機能している。だから、メディアは、高い視聴率を確保していかなければならないのです。
番組の編集サイドは高視聴率だけを求め、『視聴者は“バカ”だから、物事の背景をふまえた詳しい報道など必要ない』と言って、ジャーナリストに対して物事がなぜ起こったのかということを追求させずに、視聴者の目を引くような面白いストーリーを求めてきます。つまり、ニュース報道が視聴率重視のインフォテーメント(インフォメーションとエンターテイメントの造語)化しているのです。このことにより、人々はジャーナリストという職業への信頼感を失ってきています。
視聴者が“バカ”なのではありません。メディアが“バカ”なのであって、メディアが私達を“バカ”にしているのです。正直に言います。メディアを信用してはいけません。そして、私も信用しないで下さい。」
(北口)
わからない人集まれ〜なぜテロ?なぜ空爆?なぜ反対?
/吉岡達也(ピースボートスタッフ)
ニューヨークの連続テロ、そして先日のアフガニスタンへの空爆はなぜ行われてしまったのか?
新聞やテレビは、事件の起こるバックグラウンドについては詳しく説明してくれないし、今さら人に聞くのも気が引ける。そこで本日、「よくわからない」という参加者からの質問に対し、ピースボートスタッフ吉岡達也が解説した。
「東西冷戦時代後半、アフガニスタンは親米政権でした。そこへ旧ソ連軍による『アフガン侵攻』が起こったのです。それに対し、ベトナム戦争の苦い経験を踏まえたアメリカは、自らが割って入ることはせず、オサマ・ビンラディンをはじめとするいくつかのアフガン国内勢力に対し資金を与え、武器を渡し、テロの方法を授けることにより、彼らが旧ソ連の侵攻を崩すことができるよう差し向けました。つまり、ニューヨークのテロを起こしたとされるオサマ・ビンラディンはアメリカ自身が創り出した存在だったのです。
アメリカのそうした支援により、旧ソ連はアフガンより撤退します。そして残されたのは、たくさんの武器と、長い内戦でした。そして、アフガン近辺の国々も同様に振り回され、崩壊の危機にさらされてきました。その中で、『冨と軍事力』を、そしてその象徴であるアメリカを憎むたくさんの人々を、さらには『自らの命を失ってでもアメリカの鼻先を潰してやろう』という人々をも生み出してしまったのが、今回のテロが現実となった理由なのです。」
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