本日2010年10月18日、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋で始まりました。ピースボートは、これまでの船旅のなかで、ガラパゴス諸島、ギアナ高地、イースター島、南極などをくり返し訪れ、生物多様性の重要性を学び、人々に伝えてきました。しかし私たちは同時に、生物多様性とは自然環境や動植物の問題であるだけでなく、平和と人権の問題でもあることを主張します。それは、世界の貧困や先住民族の権利、そして戦争に深く関わる問題です。とりわけ戦争は、最大の環境破壊です。年間1兆5000億ドルをこえる世界の軍事費を、生物多様性を守るために利用するべきです。
ピースボートが考える生物多様性の守られる世界とは、あらゆる生きものが絶滅の危機を逃れ、理不尽に殺されることなく、それぞれの生命をまっとうできる社会です。世界の政府と市民が手を取り合い、努力を続けない限り、その実現はありえません。
ピースボートは、生物多様性に関して以下の点を主張します。
- 生きものを脅かす軍事基地はいらない
軍事基地は、生態系に大きな悪影響を与えています。フィリピン・スービックにあった米軍基地は1991年に返還されましたが、人びとは今なお健康被害や環境被害に苦しめられています。南米のエクアドルでは、近年、米軍基地を撤退させ、外国軍の基地設置や駐留を認めない憲法を採択しました。このような選択を各国が行い、多様な生命を守っていくことが必要です。 沖縄の辺野古の海は、絶滅危惧種であるジュゴンやサンゴ礁など生物多様性の宝庫です。私たちは普天間飛行場の代替施設を辺野古に建設することに反対し、基地のない沖縄を求めます。
- 核と生命は共存できない
ピースボートは、これまでに100名以上のヒロシマ・ナガサキのヒバクシャとともに世界を旅し、核兵器のもたらす被害を伝えてきました。その過程で私たちは、核施設や劣化ウラン弾などによって、世代をこえて放射能被害に苦しむ人が世界各地に暮らしており、「核をなくしたい」という思いが市民の共通の願いであることを学びました。核廃棄物の問題も深刻です。核は、地球上すべての生きものと環境に対する脅威です。「核のない世界」を実現すべく、市民も政府も活動をしていかなければなりません。
- 先住民族の権利を認める世界を
世界各地の先住民族は、何世代にもわたり自然と調和のもとに暮らしてきたとともに、権利侵害にも苦しめられてきました。カナダ・ブリティッシュコロンビア州では、先住民族の聖地がリゾート開発により侵害され、それまで生活をしていた森で暮らすことが困難になっています。「環境保護」、「開発」の名のもとに行われる人権侵害があってはなりません。先住民族の知恵から学び、すべての人が自然と共存できるよう、その生活・文化基盤を守り、権利を認める社会作りをしていくことが重要です。とりわけ私たちは、アイヌの人々の経験に学び、日本における活動を続けていきたいと思います。
- 開発のあり方を見直そう
ピースボートは世界を廻る中で、私たちの暮らしが世界中の生物多様性の上に成り立っていることを学んできました。また、大規模な開発や森林破壊が環境や貧困問題を悪化させていること、そのような状況を食い止めるために多くの人びとが努力していることも目の当たりにしてきました。いま、これまでの近代化と開発のありかたを見直し、持続可能な社会作りを行っていくことが必要とされています。そのためには、各国が目先の利益や国益のみを追求して対立するのではなく、地球益を追求していく姿勢が不可欠です。
これらのことを踏まえ各国政府のリーダーが名古屋で議論を深めること、またこれを機会に多くの市民がこの問題を考え行動することを、ピースボートは呼びかけます。
2010年10月18日
国際交流NGO ピースボート
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