2010年9月20日〜23日、ニューヨークにて国連ミレニアム開発目標(MDGs)サミットが開催されます。
「極度の貧困や飢餓の半減」など、貧困のない世界の実現に向けた8つの目標「MDGs」の達成期限である2015年まで5年となった今年のサミットは、世界各国のリーダーが集まり、これまでの実績を検証するとともに今後5年間の取り組みを決定する重要な会議です。
この会議の開催に先駆け、ピースボートは国際平和ビューローなどとともに「市民社会によるMDGsサミットへの提言:今こそ優先順位の転換を 〜貧困をなくすために軍事主義に立ち向かおう〜」と題する提言を発表しました。
また、国連MDGsサミットの直前、2010年9月17日〜19日には、全世界で「貧困をなくしたい」との意志を世界各国のリーダーに伝えるキャンペーン「スタンド・アップ・テイク・アクション」が行われます。貧困のない世界の実現に向け、ピースボートもこのグローバルアクションに参加します。このアクションは「立ち上がる」ことだけで誰もが参加することができますので、ぜひご参加ください。
「スタンド・アップ・テイク・アクション」の詳細・参加方法はこちら:
STAND UP TAKE ACTION(スタンド・アップ
テイク・アクション)
市民社会によるMDGsサミットへの提言:
今こそ優先順位の転換を〜貧困をなくすために軍事主義に立ち向かおう〜
(2010年8月20日、ジュネーブにて):
今から1ヶ月後、ニューヨークにて国連ミレニアム開発目標(MDGs)サミット(9月20日〜22日)が開催されます。このサミットを機に、貧困をなくすための世界規模のたたかいは新たな局面を迎えることになります。同サミットは、長年にわたり行われてきたハイレベル会合の中で最も新しいものであり、前例のないほどの富があふれている現代社会の抱える大規模な貧困への対策が話し合われることになっています。
国連事務総長は、サミット開催に向けた準備報告書で「世界はMDGsを達成するための知識と資源を有している」と述べています。「私たちにとって今日の課題は、MDGs達成に向けた行動計画に合意をすることだ」
開発の問題は金銭だけで解決することはできず、多くの変革が必要となります。しかしもちろん、資金は重要な要素です。残念なことに、世界各国の指導者たちに提示された計画にはまたしても、政府が最も予算を割いている項目についての記載がありません。その項目とは、 世界の莫大な軍事費です。
国連事務総長の報告書は、武力紛争に触れており、そこでは、戦争や暴力の根源にある「潜在的な推進力、リスク、そして緊張状態」が強調されています。しかし、軍事問題や暴力問題に取り組んできた私たちは、増え続ける軍事部門への投資こそが一番の「潜在的な推進力」であると主張します。最新のデータ(*1)によれば、2009年の世界の軍事費の合計額は、過去最高額の1兆5310億ドルに達しています。今一度、この多額な公的資金が軍事に使われ、開発問題にも気候変動対策にも回すことができないでいることに改めて目を向けるよう、私たちは各国政府に呼びかけます。
元米国大統領アイゼンハワー氏は、かの有名な演説で以下のように述べています:
「すべての銃の鋳造も、すべての戦艦の進水も、すべてのロケットの発射も、最終的にその意味するところは、食べられもせず飢えている人々 や、着るものもなく凍えている人々からの盗みでしかない。世界の軍事は単にお金を使っているだけではない。労働者の汗、科学者の才能、子どもたちの希望を利用しているのだ。本来、人は決してこのように生きるべきではない。戦争の脅威という雲の下で、犠牲になっているのは人間性そのものなのです」(*2)。
私たちが懸念するのは、公的資金の使い道の優先順位が歪んでいることのみにとどまりません。世界は、武器貿易とそれに関わる多大な腐敗と欲、無責任な民間警備会社や彼らの軍事的役割の増大、援助事業の軍事化、費用のかかる軍事基地および同盟、「民主主義の推進」の名をかりて進められる市民への占領行為や残虐行為、そして何よりも、人類にとって脅威をもたらし続ける核兵器など、多くの問題を抱えています(*3)。
「今後協議されるべきテーマ」として、国連の報告書は「世界的な公共財への資金を確保し、開発問題、また気候変動のような新たな課題に関するこれまでの公約を果たすにはどのようにすればよいのか」ということを挙げています。
またしてもサミットでは、「開発のための革新的な資金調達案」に関する話し合いがもたれることでしょう。しかし、兵器や兵士などの軍事への資金供給を減らし、代わりに地球公共財や世界的な課題である気候変動への資金を増やすという優先事項の抜本的な転換以上に、革新的なことはあるでしょうか?実際のところ、このような提案は決して新しいものではありません。国連総会は過去何十年もの間、毎年「軍縮と開発」の決議案を可決し、それに伴う行動を呼びかけてきました。この動きの先陣を切り、コスタリカ政府は「コスタリカ合意」の実行、および国連憲章第26条の遵守を呼びかけています。国連事務総長自身も、「世界は過剰に武装され、平和に向けた資金は不足している」(*4)と発言しています。また、近年になって、世界中から新たな世論の支援や市民社会の取り組みが見られるようになってきています(*5)。
MDGsの達成期限である2015年まで、あと5年となりました。しかし、現在、多大な公的・民間の資金は、実際に必要とされる部門と全く違う方向に割り当てられてしまっています。今こそ、この隙間を埋める機会です。私たちは、サミットに参加する全加盟国に、軍事費を開発分野に向けるよう、そしてアイゼンハワー氏の掲げた課題に勇気を持って取り組むよう、要請します。
国際平和ビューロー事務局長 コリン・アーチャー
パックスクリスティ・インターナショナル共同代表 マリー・デニス
パックスクリスティ・インターナショナル共同代表/国際平和ビューロー理事 ケビン・ダウリング司教
パックスクリスティ・インターナショナル上級政策顧問 ポール・ランス
国際平和ビューロー理事長 トマス・マグナソン
グローバル9条キャンペーン国際コーディネーター セリーン・ナオリ
フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス(ワシントンDC)共同代表 ジョン・フェファー
ピースボート共同代表 吉岡達也
世界宗教者平和会議副事務局長 スタイン・ヴィルムスタッド
パックスクリスティ・インターナショナル事務局長 クローデット・ヴェルレイ
*脚注
1)ストックホルム国際平和研究所よりhttp://www.sipri.org
2)ドワイト・D・アイゼンハワー 『米国新聞編集者協会』(1953年4月16日)
3)これらの問題は、国際平和ビューローのノーベル平和賞受賞100周年を記念し、9月23日〜26日オスロにて開催される国際会議で話し合われる予定である。http://ipb100.org
4)2009年9月9日、メキシコシティにて行われた国連DPI/NGO会議の演説にて
5)例えば、世界宗教者会議による「ARMS DOWN!キャンペーン」では、軍事費を10%削減しMDGsのために利用することを訴え、これまでに440万人の署名を集めている。
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