韓国の哨戒艦沈没問題の平和的解決を求める声明
 ピースボートが東北アジア地域事務局をつとめるNGOネットワーク「武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ(GPPAC)」は2010年6月24日、韓国の哨戒艦沈没問題に関して、平和的解決を求める共同声明を発表しました。

 声明は、この問題への冷静な対処と、市民社会が参加する対話を通じて平和的解決を図ることを訴える内容で、東京、京都、ソウル、北京、上海、台北、ウランバートル、ウラジオストックから、東北アジア地域の主要な市民社会団体のリーダーらが署名をしています。
韓国市民社会を支持し「天安号」事件の平和的解決を求める
GPPAC東北アジア声明


 武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ(GPPAC)東北アジアは1、2010年3月26日に起こった韓国の哨戒艦「天安号」の沈没事件に衝撃を受けるとともに、すべての犠牲者ならびに親族の皆さんにお悔やみを申し上げます。同時に私たちは、東北アジア地域における政治的・軍事的緊張が高まっていることを非常に憂慮しており、事態の平和的解決を求めます。私たちは、すべての関係国が、完全な調査と対話へのさらなる努力を行うことを奨励します。それは、市民社会が参加する透明な過程の中で、事件のあらゆる側面を徹底的に検討するものでなくてはなりません。私たちは、いかなる関係国も緊張状態をさらに悪化させるような行動に出ないよう要請します。そのような行為は、平和的解決という目的のために逆効果になります。

 韓国内および国際的な多くの市民社会団体や個人が、この問題の解決に向けて重要な意見表明を行っています。なかでも韓国のNGO参与連帯は、2010年6月11日、国連安全保障理事会に報告書を提出し、同年5月20日に発表された韓国および米国、豪州、英国、スウェーデンからなる合同調査団による報告書に対して理にかなった疑問を提示しました2。他のさまざまな団体も疑問を提示していますが、これらは主に、爆発の技術的側面や、合同調査団の報告書の透明性とタイミングに関する疑問です。

 このような不安定な状況において、市民社会は、建設的な対話を促進し徹底的な調査と問題の平和的解決を助ける重要な役割を果たすことができます。それにもかかわらず、韓国政府は市民社会の取り組みに十分な敬意を払わないばかりか、逆にそれを妨害するような行動をとっており、私たちはそのことを憂慮しています。私たちは韓国政府に対して、このような政策を変えることを要請します。市民社会、各国政府そして国連が協力して冷戦の残滓を克服し、相互の信頼を醸成し、東北アジア地域における平和と軍縮を促進すべきです。こうした見地から、私たちは以下のことを訴えます。
  1. 韓国政府および国際社会による、さらに徹底的な調査が必要です。これらの調査では、中国・ロシアによる調査やこれまでの学術研究者および市民社会の分析によって提起された爆発の技術的側面などに関する未解決の疑問点が、慎重に検討されなければなりません。さらに、調査の過程と結果についての情報は、完全に一般公開されるべきです。そうすることが、事件に関する理解についての幅広い国際的合意をうるために重要です。
  2. すべての関係国は、対話による平和的解決を誓約しなければなりません。国連は、1996年に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の潜水艦が座礁した際の同様の事件において、重要な役割を果たしました3。私たちは、そのときに確認された原則、すなわち、南北朝鮮ならびにすべての関係国は対話を通じた平和的手段によって、朝鮮半島の平和と安全が強化されるような方法で紛争を解決しなければならないという原則をあらためて確認します。私たちは、国連がそのときと同様、問題の建設的な解決促進の役割を果たすことを奨励します。そのために、私たちはとりわけ北朝鮮が国連と協力し、疑問点を説明し説明責任を果たす責務があることを強調します。韓国政府は北朝鮮に対する軍事的措置や経済制裁をやめるべきであり、北朝鮮もまた、挑発的行為や敵意のこもった言葉を使うのを控えるべきです。
  3. 市民社会の意見表明と関与は、平和的解決に不可欠です。韓国では、多くの市民社会団体が今回の事態について報告書や提言を発表しています。なかでも参与連帯は、2010年6月11日に国連安全保障理事会に報告書を提出しました。このなかで参与連帯は、国連安保理がすべての根拠と証拠を慎重に検討し、公正で合理的な決定をするよう要請しました。これら市民社会によるすべての貢献には敬意が払われるべきであり、それらは慎重に検討される必要があります。
  4. 韓国政府は、市民社会との関係を対立から協力へと変えるべきです。私たちは、韓国政府が、参与連帯をはじめとする市民社会の貢献に十分に敬意を払わないばかりか、これを非難したり告訴すると脅したりしていることを深く憂慮しています。このような政府による非難や脅しがマスメディアと連動して行われていること、そしてそれが「自国を中傷する」とか「敵国を利する」といった時代遅れの冷戦の論理に沿って国家保安法への違反として展開されていることを、私たちは懸念しています。表現の自由は、完全に守られねばなりません。
2010年6月24日


当初署名人(GPPACフォーカルポイントおよび協力者。アルファベット順)

チョウ・ヨンヒ(CHO Younghee)/平和をつくる女性の会・ソウル
バディム・ガポネンコ(Vadim GAPONENKO)/国立海洋大学・ウラジオストック
黄浩明(HUANG Haoming)/中国NGO協力促進会・北京
徐斯倹(HSU Szu-chien)/台湾中央研究院政治学研究所・台北
メリ・ジョイス(Meri JOYCE)/GPPAC東北アジア地域連絡オフィサー・東京
チョン・ギョンラン(JUNG Gyung-Lan)/平和をつくる女性の会・ソウル
川崎哲(KAWASAKI Akira)/ピースボート・東京
君島東彦(KIMIJIMA Akihiko)/立命館大学・京都
イ・ジェヨン(LEE Jae Young)/韓国アナバプティスト・センター、東北アジア平和構築インスティテュート/ソウル
イ・ナレ(LEE Narae)/ピースボートUS・ニューヨーク
デニス・リン(Dennis Lin)/東呉大学・台北
松井ケティ(Kathy R. MATSUI)/ハーグ平和アピール平和教育地球キャンペーン・東京
ミャグマール・ドブチン(MAYGMAR Dovchin)/ブルーバナー・ウランバートル
牛強(NIU Qiang)/中国人民平和軍縮協会・北京
笹本潤(SASAMOTO Jun)/日本国際法律家協会・東京
ソ・ジョンギ(SEO Jung Ki)/韓国アナバプティスト・センター、東北アジア平和構築インスティテュート・ソウル
沈丁立(SHEN Dingli)/復旦大学・上海
吉岡達也(YOSHIOKA Tatsuya)/GPPAC東北アジア地域イニシエーター、ピースボート・東京

このリリースに関するお問い合わせは...
ピースボート事務局
(Tel:03-3363-7561/Fax:03-3363-7562/ウェブサイトからのお問い合せはこちら)
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