昨年9月に出航した第63回クルーズにおいてピースボートが行った「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」(通称:おりづるプロジェクト)と名付けられたこのプロジェクトは、ピースボートの呼び掛けに応じて集まった、広島・長崎のみならず、カナダ、ブラジル、オーストラリア、韓国など各地に在住するヒバクシャの方々103名と共に世界を巡りながら、各寄港地で被爆体験を語り、核兵器廃絶を訴えていくというもの。
第1回目の航海を成功裏に終え、世界の核軍縮の気運が高まっている昨今、この動きをさらに広めて行くための活動として、本プロジェクトを継続して続けていくことの重要性を感じた私たちは、2009年8月に出航した第67回クルーズにおいても、広島・長崎より10名のヒバクシャの方々と、新しい試みとして被爆証言を引き継ぐという観点から、高校生3名を招待し、世界を巡りながら被爆証言を語り伝えると共に、日本国内の継承活動にも力を入れたプロジェクトを行っています。
そして今回、秋葉忠利・広島市長より本プロジェクトへの応援のお手紙を頂きました。
関係各位
重要なプロジェクトへの支援のお願いのために、お手紙を書いております。
広島市は、世界で初めて原子爆弾を経験した都市として、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を長年呼びかけてきました。今日、いまだかつてないほど核廃絶への取り組みが必要とされています。そのため私は、ヒバクシャが核兵器の非人道性を伝える彼らの話や教訓を世界で話す、ピースボートのヒバクシャ・プロジェクト(ヒバクシャ地球一周 証言の航海)に対する支援を表明します。
ピースボートの第二回ヒバクシャ・プロジェクトは、現在数カ月にわたり20ヶ国をまわり、核軍縮に関する教育を行っています。この船旅の参加者とりわけヒバクシャが安全な航海をし、それぞれの寄港地で温かく迎えられることを希望します。ヒバクシャが苦痛を生き抜いてきた勇気と、核兵器の将来的な使用に反対するために個人的な経験を語る勇気は、讃えられるべきです。
各寄港地での協力は、ヒバクシャたちを安全に迎え入れるためだけでなく、この航海の重要な目的をまっとううするために、不可欠です。ピースボートとヒバクシャ・プロジェクトは、平和で核のない未来の必要性について世界に向けて発信し、関心を高めることに貢献しています。私自身も、第一回プロジェクトのヒバクシャにニューヨークの国連本部で直接お会いし、広島に帰還された際にお出迎えできたことを大変嬉しく思っています。この航海中に行われる軍縮教育や、若者・市民・NGO・他の国の戦争被害者とのヒバクシャの直接の交流は、核兵器廃絶に向けて高まる世界的な動きに対する非常に重要な貢献になることを確信しています。
加えて私は、1982年に広島市長によって始められた、国境を越えて核廃絶を推進する「平和市長会議」の事業をピースボートが広めてくれていることに感謝の意を表します。現在、134ヶ国、3,147都市が平和市長会議に加盟しています。このうち27都市が、第一回プロジェクトのヒバクシャによる直接の訴えの結果、加盟してくれたものです。
さらに、ピースボートのヒバクシャ・プロジェクトは、広島・長崎への原爆投下から75年になる2020年までにすべての核兵器を廃絶する「核兵器廃絶のための緊急行動2020ビジョン・キャンペーン」への支援を集めることにも、私たちとともに取り組んでいます。これは「ヒロシマ・ナガサキ議定書」の採択を支持することであり、また、「都市を攻撃目標にするな」プロジェクトを推進することです。
この歴史的な転機を迎えて、ピースボートのヒバクシャ・プロジェクト「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」は、21世紀に私たちが直面する世界的な問題を解決していくために市民が重要な役割を果たしていることを強く示しています。軍縮に向けた動きが世界的に高まる中、このプロジェクトは、核廃絶へに取り組む者たちは「オバマジョリティー」であることを物語っています。私は、このプロジェクト、並びに参加したヒバクシャや学生の核廃絶に向けた重要な貢献を讃えます。この航海の安全と成功を確保するためにできうる協力を関係の皆様方にお願いするとともに、平和で持続可能な核兵器のない世界を実現するためにともに取り組むことを要請します。
2009年10月
広島市長 秋葉忠利 (翻訳/ピースボート)
※原文(英語)のPDFはこちら:Message to Peace Boat by Mayor of Hiroshima |