2009年5月23日、大韓民国の前大統領、盧武鉉氏が逝去されました。盧武鉉氏の冥福を祈り心より哀悼致します。
ピースボートは日本政府が歴史事実を歪曲した1982年の歴史教科書問題をきっかけに発足し、「自らの過去のあやまちを直視することは未来の平和を築く」という信念の下、世界各地の紛争や植民地支配の被害者証言の聞き取りなどを通じ、市民レベルでの平和国際交流活動に取り組んでいます。
それ故、盧武鉉政権下、韓国の市民社会が民主化の一環として過去の清算に取り組んでいたことを、私たちは共感を抱きながら注視していました。
韓国の過去清算は、植民地時代のみならず、朝鮮戦争での惨事、そして軍事政権下に行われた人権弾圧にまで及んでいました。人権弾圧の真相究明は、被害者の痛みに対する社会の共感を促し、被害者の方々の名誉回復に貢献しました。
日本では、日本政府に過去の清算を求める韓国の人々の声を「反日」感情に根ざした過度なナショナリズムだとして報道されることが少なくありません。しかしその韓国の人々の声は、過去を歪曲しようとする日本政府に対する抗議であると同時に、日本と韓国を含めた東北アジアに平和で、民主的で、人権が尊重される社会を築こうという呼びかけであると私たちは考えています。
金大中政権からの太陽政策を継承し、南北間の対話をねばり強く進め、過去の清算に取り組む盧武鉉大統領は、民主化と平和、人権を尊重する韓国市民社会の力強さを象徴する存在でした。
韓国も日本と同様に大変な不況下にあると聞きます。このような経済状況が影響し盧武鉉政権下で実現した民主化や市民社会の発展という果実までが否定的に扱われることを私たちは危惧しています。
盧武鉉前大統領の死は、長年の民主化闘争の末に勝ち得たかけがえのない成果を、韓国の市民社会が他の東北アジアの友人たちとともにより発展させ得るか否かを問うているのではないでしょうか。
東北アジアを、そして世界を、平和で人権が尊重される地域にしようという同じ志を持つ市民として、盧武鉉前大統領の死を悼むとともに、東北アジア、そして地球社会の平和と民主化実現のために行動する友人の皆さんへピースボートから連帯のメッセージを送ります。 |