青森県知事 三村申吾殿
六カ所核燃料再処理工場は、第4ステップの試験が、当初の実施計画通りの成果が得られなかった段階であるにもかかわらず、去る2月14日、第5ステップ開始へと踏み込みました。
ピースボートは、環境や人体への安全性と、経済的・社会的正当性が証明されない本施設の本格操業の無期限延期を求めます。そして、三村県知事には、本格操業にむけた安全協定への署名を拒否していただくことを要請します。
現在も、本格稼働のポイントとなる「ガラス固化体」作業への安全性が十分に確認されておらず、加えて稼働に伴い製造される放射性廃棄物の最終処分場の候補地さえも挙げられていない状況にあります。
このような状況において、世界中の市民との草の根交流を25年間続けてきた私たちピースボートは、再処理工場の本格操業が日本国内だけでなく周辺アジア諸国、ひいては全世界的な規模で及ぼす影響――大規模な環境汚染と核拡散の危険性を無視することはできません。
2005年、ニューヨークの国連本部で開かれた核不拡散条約再検討会議では、米国の「憂慮する科学者同盟」が施設稼働に伴い製造される年間8トンのプルトニウムが引き起こす核拡散問題に対し、「六カ所再処理工場運転の無期限延期を求める呼びかけ」を発表、ノーベル賞受賞者などの専門家27名がこれに署名をしました。これをうけ、ピースボートも米、英、仏、露、中、印、日を中心とした、世界中の科学者、法律家、議員、有識者、環境団体、被爆者や平和活動家などとともに、日本政府に対し、同様に稼働無期限延期の要請を行いました。
また、韓国の環境運動を率いているNPO「環境財団」とピースボートが共に運営するピース&グリーンボートの船旅では、去る2007年7月、韓国と日本の市民約300人が、六カ所再処理工場と放射能の排出がもたらす環境や人々への影響について学び、現地を訪問しました。
同船旅において寄港した釧路・ウラジオストック・サハリン・カムチャッカ・釜山では、この問題に対し、各地の人々にアンケート調査を行い、多くの人が本格稼働を危惧すると回答しました。
このように世界中の市民や有識者が懸念の声をあげる中、人々の生活と環境の安全性や操業の経済性が納得のいく形で証明されていない状態のまま本格稼働を支持することは、市民が安心して暮らすことができる持続可能な社会作りという青森県の掲げる理念に反し、また、核軍縮と核拡散防止を推進する日本政府の方針にも反することになります。
これらの経緯をふまえ、三村県知事には、再度、工場の本格稼働を許可する安全協定に署名しないことを要請いたします。 |