内閣総理大臣 安倍晋三殿
2007年6月26日のアメリカ議会下院外交委員会での可決に引き続き、7月30日、下院本会議にて、日本軍「慰安婦」問題に関する決議が満場一致で採択されました。日本政府がこの決議を真摯に受け止め、掲げられた要求項目に誠実に応えることを私たちは強く求めます。
ピースボートは82年の「教科書問題」をきっかけに発足し、アジア・太平洋地域の市民レベルでの交流を続けてきました。しかし日本政府が過去の植民地支配とアジア太平洋戦争の被害者に不誠実な対応を取り続けている限り、アジア・太平洋地域に真の和解はもたらされないことを私たちは痛感しています。
今回の決議では、1)日本軍「慰安婦」制度の責任を日本政府が「明瞭かつ曖昧さのない形」で公式に認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れること、2)日本国首相の公的な資格でなされる公的声明として謝罪を行うこと、3)「慰安婦」制度を否定する言説に対して日本政府として明瞭かつ公式に反論すること、4)「慰安婦」制度に関する国際社会の勧告に従い、次世代に教育を通して「慰安婦」問題に関する記憶の継承に日本政府が取り組むこと、を求めています。
1)、2)については、安倍首相訪米時のようにブッシュ大統領に謝罪するのでなく、日本軍の性奴隷になることを強いられたアジア・太平洋地域の被害女性自身に謝罪することを求めます。また、河野官房長官談話が発表された後も、それを否定する発言を歴代閣僚が繰り返し行い、その結果、戦後60年以上もの間、被害者が人間としての尊厳を傷つつけられ続けてきたことに対しても深く謝罪することを求めます。被害者の一部がまだ生存している今、「明瞭かつ曖昧さのない形」で謝罪しなければ、日本政府の名誉回復は長期に渡って困難になるでしょう。
3)については、本年6月14日にワシントンポスト紙に掲載された「事実」(THE FACTS)と題する意見広告についても「明瞭かつ公式に反論すること」を求めます。意見広告において40名を超す国会議員が名を連ね、「日本軍『慰安婦』制度に関して軍の強制はなかった」と主張したことを日本政府が黙認することは許されることではありません。
4)については、82年に政府によって定められた「近隣諸国条項」(教科書検定基準として定められている「近隣のアジア諸国との間の近現代史の歴 史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること」という条項。国際公約の役割を果たしている)を遵守し、学校で使用される歴史教科書に日本軍「慰安婦」制度について、歴史的事実を記載し、そして、歴史的責任を明らかにすることを求めます。
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