日本人ジャーナリスト襲撃事件を受け、改めて自衛隊の即時撤退を求めるピースボート声明
 5月27日、バグダッド南方のマフムディヤ付近で日本人ジャーナリスト2人の乗った車両が襲撃され、外務省は、2人が死亡した可能性が高いと発表しました。
 私たちピースボートは、中東地域における活動の中で、殺害されたと報じられている2名のうちの橋田信介さんと同行したこともありますが、センセーショナリズムに走らず冷静に現地を追う彼の取材姿勢に強く感銘を受けました。私たちは、今回の報道に強い衝撃を受けており、引き続き正確な情報の収集と報道がなされることを望んでいます。

 今回の事件に関し、ジャーナリストをはじめとする邦人が政府の退避勧告にしたがうべきであると強調する議論があります。先の人質事件以来、一部には邦人渡航禁止の法制化論まで登場しています。しかし、これは筋違いの議論と言えます。
 政府とは異なる観点から、民衆の真実を確認し、それを伝えることが、ジャーナリズムの役割です。一方で、政府とは異なる観点から、民衆の真実を確認し、支援や交流活動を展開することが、私たち非政府組織(NGO)の役割です。国家の政策の下で民衆の命と権利が奪われていくとき、ジャーナリストやNGOの役割は高まっているのであって、その行動を制限するような政策は、民主主義の土台を崩壊させる危険すらはらんでいます。

 いま私たちに求められていることは、イラクの現実に目を向けるとともに、イラクを危険にし、日本人に対する敵意を助長している原因そのものを除去することです。そのためにこそ、私たちは、自衛隊の即時撤退を改めて訴えます。

 昨年11月の外交官殺害事件、今年4月の人質事件から引き続く今回の事件で、自衛隊派遣に象徴される日本の対米追従的イラク政策が、イラクおよびアラブ社会に深い憤りを生んでいるという現実が、改めて浮き彫りになりました。イラクはまさに戦時下にあり、イラク特措法の定めるような「非戦闘地域」などないことは、もはや明らかです。

 6月末に予定されている「主権委譲」の後、自衛隊が多国籍軍に参加する方針であるとの報道がなされていますが、言語道断です。日本は、自衛隊を即時撤退させ、米軍にも撤退を促すことで、暴力の連鎖を断ち切る一歩を踏み出すべきです。そして、真にイラク市民による統治が可能な環境を作ることこそ、私たち地球市民にとっての急務なのです。


この声明文に関するお問い合わせは...
ピースボート事務局(担当:木下)
(Tel:03-3363-7561/Fax:03-3363-7562/ウェブサイトからのお問い合せはこちら)
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