韓国政府の「イラク派兵」に対する日・韓・在の共同声明

小泉首相と盧武鉉大統領へ!
米国のイラク侵攻支持を即時撤回し、
戦争の即時停止を要求をすることを求めます


 米国の不当で不法なこの戦争によって、子どもをはじめたくさんのイラク市民が死の恐怖に怯え、さらなる悲劇と憎悪が毎分毎秒生まれています。さらに劣化ウラン弾による空爆という、イラク市民の命と未来を奪う人道上断じて許すことの出来ない米国の攻撃に対し、被爆国日本が支持していることに、私たちは怒りを禁じ得ません。日韓政府の米国支持は、今なお被爆の後遺症に苦しむ人々の核廃絶を望む切実な願いを踏みにじるものに他なりません。米国のイラク攻撃に反対し、反戦と平和を訴える市民の圧倒的な世論を日韓両政府は無視しているのです。

 私たちは、イラクの一般市民に対する殺戮行為を即時停止するよう米軍および各国政府に訴え、この戦争を支持している日本政府と韓国政府に対しても、即刻、米国のイラク侵攻支持を撤回し、戦争の停止を米政府へ要求することを求めます。

<国家の過ちによって若者の未来が壊れようとしています>
 私たちは、いかなる場合も武力による解決、戦争に反対します。
 私たちは、国際社会の枠組みから逸脱した米国に追随する日本および韓国政府の誤った判断の責任が私たち若者世代にそのまま引き継がれ、そのことが若者の未来を蹂躙するというこの無責任極まりない決定に対して、大きな憤りとともに、強い危機感を抱きます。私たちは望むと望まざるとにかかわらず、イラクの人々から「侵略者を支持し、戦争に荷担した国の人間」として後世にも記憶されるでしょう。国家の犯した過ちによって、被害者と加害者の側に引き裂かれてきたのは、常に私たち若者です。

<米国のイラク攻撃支持は東アジア地域に危機をもたらします>
 日本国首相と韓国大統領は、この米国支持の決断が東アジア地域の市民を再び戦争の犠牲にする可能性を開くものであることを、深く認識すべきです。大量破壊兵器の保有疑惑と民主的政権ではないという理由でイラク攻撃が行われている現状を支持すれば、米国の先制攻撃の次なる標的に朝鮮民主主義人民共和国がなることに正当性を与えかねません。

 同時に、日本国首相と韓国大統領は、人類の平和にむけた国際協調主義の取り組みと努力の枠組みを破壊したことを深く認識すべきです。イラクに侵攻した米英政府およびそれに同調する国々は、イラクのフセイン政権に一方的に責任を転嫁していますが、主権国家の論理のみを振りかざし、「アメリカの脅威を取り除くための先制攻撃は主権国家として正当である」という論に立つならば、大量破壊兵器の開発も同じ文脈からすべて主権の範囲内ということになります。主権国家の論理だけでは人類の平和と繁栄を実現することが不十分なため、これまで国際的なルールを作り出すための努力が積み重ねられてきました。今回の支持決定は、この努力をすべて水泡に帰し、世界を更なる混乱状態に陥れる可能性があります。

 さらに、朝鮮民主主義人民共和国の核開発問題の平和的解決を米国が保障することと引き替えに、韓国政府が米国支持と派兵方針を決定したことは、盧武鉉政権が揚げたばかりの東北アジアの平和共同体構想にまさに逆行するものです。

<日韓政府は、同盟国として、米国へ即時停戦を要求してください>
 私たちは、小泉首相と盧武鉉大統領へ以下のことを強く求めます。
 日本政府と韓国政府は、米国の一国覇権主義にもとづく名分なき戦争への支持を即刻撤回するとともに、「平和のための結集決議」に基づいて国連緊急総会の召集を提案し、即時停戦の勧告を求めるとともに戦闘終結後の展望に関する国連のイニシアチブを確立させるべきです。
 国際協調を破壊してイラク侵攻に踏み切った米国へ日韓政府が追随することは、東アジアの平和実現に向けた日本と韓国の外交的選択肢を狭めるのみならず、次は東アジアを大混乱に導くものに他なりません。日韓両政府の決定が、東西冷戦時代以上に東アジアを混乱に陥れることは、火を見るよりも明らかです。
 他国に対する戦争を支持し協力する国家が、朝鮮半島や東アジアの平和と安定の実現を語っても説得力がないということを、日韓両政府は肝に命ずるべきです。

<日本と韓国は、東アジアにおける平和外交のイニシアチブを握るときです>
 私たちは、小泉首相と盧武鉉大統領に対して、東アジアの平和の実現に向けて二国間対話および多国間対話を積極的にすすめ、平和的に問題解決をはかることを強く求めるとともに、以下の提案をします。

1.「日朝国交正常化」交渉を早期開催すべきです
 日本政府は、われわれの地域でこのような戦争を起こしてはならないという立場を明確にし、「日朝国交正常化」交渉を早期に再開すべきです。小泉首相は米国によるイラク攻撃が開始された3月20日の会見で「日本に対してもいつ脅威がふりかかるか分からない」と述べ、米国のプレゼンスが日本防衛のための抑止力になっていると述べました。いっぽう、北朝鮮との関係については「ピョンヤン宣言の精神を尊重し、誠実に実行に移し、不正常な関係を友好関係に変える」という決意を表明しました。もしも日朝国交正常化の交渉を求めるのが日本政府の立場であるならば、ただちに交渉を再開しなければなりません。
 北朝鮮と米国の直接対話が閉ざされている危険な状況のなかで、日本は「ピョンヤン宣言」を拠り所に北朝鮮と対話が可能な立場にあります。日本が北朝鮮と話合いを進めることがどうしても必要です。

2.「東北アジア地域の非核地帯建設」を安全保障政策とすべきです
 東北アジアの安全保障について北朝鮮の核開発疑惑が焦眉の課題となっている今こそ、日韓両政府がイニシアチブを取って「東北アジアの非核地帯化」を推進することを求めます。この地域の平和と安全のために、非軍事的な安全保障政策の枠組みを多国間で話し合うための重要な契機がきています。
 日本と韓国には約8万人の米軍が駐留しており、周辺国の中国、ロシア、米国は全て核保有国です。もともと、南北コリアは92年に「朝鮮半島非核化共同宣言」をし、日本は「非核三原則」を国是としており、三者が対話のテーブルにつくことは可能なはずです。南北コリアと日本で早期に非核兵器地帯条約を締結し、周辺国の米国、中国、ロシアに対しては「核を持たない国には核攻撃をしない」という議定書を設け、確認させる必要があります。また、北朝鮮はNPT体制に早期復帰しなければなりません。


 私たちは日本、在日、韓国のNGOとして、これまで民間レベルによる日朝、日韓、南北コリア間における対話と交流を独自に推進してきました。私たちは東アジアの非戦平和共同体実現を訴えるために、今後も東アジアにおける民間対話と交流を推進していくことをここに明言し、日本政府と韓国政府に以下のことを求めます。
(1) 小泉純一郎首相と盧武鉉大統領は、米英軍によるイラク侵攻支持を即時撤回すること
(2) 日本政府は「復興支援金」の拠出やPKO出動という戦争協力を行わないこと、韓国政府は「工兵の派兵」を撤回すること
(3) 日本政府と韓国政府は、国連緊急総会の召集を提案して米国に対する即時停戦の勧告を求めるとともに、米国に対して国連の枠組みと国際協調主義への復帰を求めること
(4) 小泉純一郎首相は、「日朝国交正常化」交渉を再開するためにも、早期に再訪朝すること
(5) 日本政府と韓国政府は、非軍事的な安全保障の枠組みとして、東北アジア地域に非核地帯を建設する ために、多国間による対話を呼びかけること

2003年4月3日
ピースボート
在日コリアン青年連合(KEY)
韓国青年連合会(KYC)


このリリースへのお問い合わせは...
ピースボート事務局・担当:中原
(Tel:03-3362-6302/Fax:03-3362-6309/ウェブサイトからのお問い合せはこちら)
最新のプレスリリース一覧へ