10月10日にアメリカ上下両院においての、イラクへの武力攻撃の権限を、ブッシュ大統領に与える両院共同決議の採択をうけ、国際NGOピースボートは、アメリカのイラクに対する先制武力攻撃に反対の立場を明らかにすると共に、それを支持する英国政府、日本政府、その他の各国政府に対して、速やかに「武力攻撃に不支持」の立場を表明し、国連決議を尊重した形でのイラク問題の解決を求めるように訴えます。
イラク政府が大量破壊兵器に関する「査察無条件再開」を明らかにした今、イラクへの一方的な軍事介入は、国連安保理での合意を無視するだけではなく、「平和的手段による解決の原則」そして「内政不干渉の原則」を基調とした国連憲章をも否定することになります。そして、アメリカ政府は飛行禁止区域をはじめ、すでにイラク南部に対して行っている空爆を停止し、国連による調停努力を全面的に支援し、あくまで外交努力による平和的なこの問題の解決に尽力するべきだと考えます。
また、「国益」ではなく「人益」を最優先するNGOの立場から、イラク国民つまり、民間人の犠牲者の拡大こそが、この空爆という武力行使の最大の問題であると考えます。ただでさえ、湾岸戦争以降、国連による経済制裁の影響で、この10数年間で100万人ものイラク国民が犠牲になったという現状の中、さらなるイラク空爆は、さらに多くの人命を奪い、飢餓、貧困、難民、を拡大させることは明白です。また、湾岸戦争時に投下された劣化ウラン弾の後遺症は、いまなお多くの人々を苦しめています。今回の空爆で、例えばアフガニスタンで使用された新型爆弾や、それを上まわる科学兵器が使用されるとした場合、将来的にもイラクの人々は危機にさらされる恐れがあります。
私たちピースボートは、上記のような理由から米英軍による、イラクに対する武力攻撃に対して反対の声明をあげるとともに、それを支持する日本政府に対しては、戦争と軍備の放棄を謳った日本国憲法九条の理念に基づいて、この軍事介入には加わらず、湾岸戦争と同じ惨劇を黙視するだけではなく、積極的に外交による平和解決も模索すべく、アメリカ政府をはじめとした、それを支持する各国政府に働きかけを行うことを要請いたします。
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