まず、拉致事件の犠牲となった方々、またそのご家族に対し、心より深い哀悼の意を申し上げます。私たちはこの拉致事件が事実であったとの報に触れ、人間として、大きな怒りと憤りを感じるとともに、このような非人道的行為を行った朝鮮民主主義人民共和国政府に対し強く抗議します。そして、公式の謝罪と真相の解明、そして被害者とその家族に対する最大限の人道的配慮、そして再発防止のための明確な対策の発表を求めます。
今、日本と朝鮮に暮らす市民にとって最も必要なことは、この悲劇的な事実を踏まえ、二度とこのような悲劇が起こらないようお互いに協力し合うことを誓い、憎しみの連鎖を生み出すのではなく真の和解を実現すべく努力することだと私たちは考えます。「真の和解」なくしては本当の平和はありえません。私たちは、戦後57年間に渡り、「真の和解」を実現することができませんでした。そして、そのような状況を看過してきたことが、今回の悲劇にもつながったともいえるのではないでしょうか。
私たちは二度とこのような悲劇を繰り返さないために国交の正常化を求めます。そして朝鮮のみならず韓国、在日コリアの市民を含む日本と朝鮮半島に暮らす市民の心からの「真の和解」が急務であると確信します。
私たちは、今ほど強く「過去の清算」の必要性を感じることはありませんでした。日本が、過去の歴史において朝鮮半島を侵略し、植民地支配をし、朝鮮半島に暮らす人々に大きな苦痛と悲しみと損害を与えてきたことは事実です。私たちは国際交流NGOとして1991年以来6回にわたり現地を訪問し、その事実を検証してきました。そして元強制連行労働者、元従軍慰安婦、朝鮮人被爆者など戦争被害者の方々の多くが苦しみのなかで亡くなられ、存命中の方々は今も、苦しみと怒りの中におられることを知りました。
このような状況を引きずりながら、「真の和解」を実現することは不可能です。私たちは、日本政府が拉致事件に関し厳しく朝鮮民主主義人民共和国政府に迫ると同時に、早急に過去の侵略と植民地支配に対する公式の謝罪と清算を行うことを前提とした、日朝国交の正常化を求めます。そして、二度と忌まわしい拉致事件が起らぬよう、またいかなる侵略行為も起こさぬよう「真の和解」を実現するべく、南アフリカでネルソン・マンデラ氏が提唱したものと同義の「真実と和解のための委員会」の公的設置を呼びかけます。
そして私たち国際交流NGOのピースボートは、引き続き、過去の検証と朝鮮と日本に暮らす人々どうしの相互理解と信頼醸成をこれまで以上に促進し、東アジア地域における平和をつくるため、政治状況に左右されない市民・NGOの交流を続けていきます。
|