■バックナンバーVol.5■
[林達雄さん(「アフリカ日本協議会」代表、医師)] |
今回の水先案内人は、何度も乗船されている"ベテラン"林達雄さん。長年、内戦や貧困で傷ついた人々の生活支援をおこなってきた医師であり、近年ではエイズ問題に取り組んでいらっしゃる林さんにお聞きしました。
Q:ピースボートには何度も乗船されていますよね。今クルーズでもいろんな講座を開いてくださいましたが、感想をひとこと。
A:今回は、ケニアからもHIVポジティブのアスンタさん、息子のピーターくんも乗船したことで、みんなにエイズ問題についてより深く実感してもらえたかな、と思っています。
今までと比べると、ちょっとみんな「おとなしい」かな、とも思うけど、いろんな世代とエイズ問題について話すことができたことが嬉しかったな。また、私自身が2004年はどういう方向に活動していこうか、という話まで出来たよ。
Q:講座では「日本人は現状を知る事が大事」とおっしゃっていましたが、何をいちばん知ってほしいと思われますか?
A:HIV感染者とその子どもたちが、どう生きているか、社会でどういう差別を受けているかを知ってもらいたい──知った上で「どう行動するか」を考えてほしいなと思いますね。
Q:今回乗船されていかがでしょう?
A:僕はいつでも、踊ったり歌ったりしたい、という「好奇心」が旺盛なんですよね、今回もそうだったし、それでみんなとも仲良くなれたし──だから、船を降りるのは寂しいなぁ…でもまぁ、帰ってやることはたくさんあるからね(笑)
Q:では、最後に一言お願いします。
A:HIV/AIDSには、もちろん感染しないことが大事だけれど、感染者を受け入れる決意も同時にしてほしい、と思っています。
(聞き手:大日向麻由子)
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[ジョゼ・アラウージョさん(「GIV(命を励ます会)」メンバー)、下郷さとみさん(フリーライター)] |
ブラジルまで乗船の水先案内人、ブラジルのNGO「GIV(命を励ます会)」のメンバーであるジョゼ・アラウージョさんと、フリーライターであり、ブラジルのファベーラ(スラム街)での生活を経験されたことのある下郷さとみさん。
お互いの講座にゲストや通訳として参加し、盛り上げている一心同体のようなお二人にインタビューしました。お二人を見ていると、ブラジルの明るく前向きに生きている人々の力強さが伝わってきます。これからブラジルを訪れて、実際に体感するのがより楽しみになってきました。
Q:ピースボートに乗船することになったきっかけは何ですか?
A(アラウージョ):今回2回目の乗船で、初乗船は去年の40回クルーズです。下郷さんの関わっているNGOの招待で、94年から毎年日本全国で講演会をしているんですが、その訪日時にピースボートの事務局を訪れて、過去乗船者やスタッフの話しを聞いて関心を持ちました。それから、船で大西洋を横断するという長い期間ですから、色々な人と意見交換ができるという魅力を感じました。
A(下郷):今回で6回目の乗船になります。初乗船は95年のベレンに寄港したときで、ブラジル初寄港の時でした。ピースボートがブラジルのことを話せる人を探しているということで、知り合い経由で話がきました。
Q:お二人で仕事をするようになったのはいつ頃からですか?
A(下郷):初めて出会ったのは93年、私が「GIV」を訪れたときです。アラウージョは覚えていないんですよっ(笑)アラウージョの日本招聘(しょうへい)に99年から関わり始め、以来、毎年一緒に仕事をしています。来日したときはコーディネーター兼通訳として一緒に全国をまわっています。
Q:下郷さんがブラジルに関わり始めたのはいつからですか?
A(下郷):92年に、サンパウロのファベーラで働いていた日本人の友人に誘われて、94年まで住み込みでボランティアをしていました。最初はポルトガル語も全然話せなかったんですよ。
その後は日本で生活しています。でも1年に1、2回くらいはブラジルに行っていますよ。
Q:お二人にとって、伝えたいブラジルの魅力とは何ですか?
A(アラウージョ&下郷):一言で言うと『多様性』ですね。ブラジルは人、自然、文化、時間の「多様性」を持っている魅力ある国ですが、「負の多様性」も持ちあわせているんですよ。
地方と大都市で貧富の差が激しく、貧困や犯罪、警察の汚職など様々な困難を抱えています。しかし、そんな「負の多様性」が凝縮したようなファベーラからも、夢を抱いて力強い運動やエネルギーが湧き出ています。
ブラジルの人は希望を持って生きることを素直に表現するんですね。社会が大変な状態でも夢を失わずに明るく前向きに生きている人々がいる。そんな魅力をみなさんに伝えていきたいです。
Q:最後に一言お願いします
A(アラウージョ):ブラジルへの寄港時間が短いのは残念ですね。ブラジル人だからではなくね──ブラジルは様々な社会問題を抱えている国ですが、同時にそれを解決しようとするアクティブな活動が華開いている国です。ピースボートの旅の目的にとっても、重要な国じゃないですか??それに、ブラジル関係の水先案内人が四人も乗っているのに…今クルーズ最大の欠点じゃないですか?(笑)
A(下郷):ピースボートならではの交流プログラムでは、表面だけをさらっと見て「怖いな、かわいそうだな」と思うだけじゃなく、同じ人間として、通じあえるものを感じてきて欲しいです。
(聞き手:中園直樹)
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