■バックナンバーVol.4■
[桃井和馬さん(フォトジャーナリスト)] |
『その道のプロ』、水先案内人を紹介していくコーナー。今回は、これまで世界120ヶ国以上を訪れ、環境破壊・紛争などをテーマに取材を続けるフォトジャーナリスト、桃井和馬さんにお話を伺いました。ピースボートに乗ってくる若い世代に桃井さんが訴えたかったこととは?
Q:ピースボートに乗船されたそもそものきっかけは?
A:4年くらい前から何度か乗っていて、もともとはこちらのスタッフに誘ってもらったんだけど──最初はキライでした(笑)ピースボートというものに少し偏ったイメージがあったから、その中にいること自体が色がついて見られちゃうというか…。
ジャーナリストって、ある意味どこからも離れて自分の意見を言う立場じゃなきゃいけないでしょう。でも、乗ってみたらあまりに面白くて。公の海の上でのディスカッションの場所、出会いの場所、そしていろんな意味での「場」というものが、ものすごく意味の深いものだなぁ、と思いますね──で、今では、PPT(ピースプロジェクト@多摩)というのを立ち上げるまでになってしまいました(笑)
Q:あ、多摩地区から選出された若者が1名、代表でピースボートに乗るという話のことですね?
A:うん、そう。実際には次の45回クルーズからなんだけど、若い人にはより多くの機会を得てほしいということで、僕らがお金を集めてまずは多摩地区から始めていこうと…。
それでもやっぱり、「乗った人の責任」ってあると思うんですよ。それはものすごく重要なことで、とてもいい経験をしてるんだから、自分の中に留めておくだけでなく、いろんな人に伝えていってほしい。そこで自分たちに何が出来るのか、ということを問いかけている船でもあるわけですよ。
Q:──ところで、環境破壊や紛争の写真を撮り始めてどのくらいになるんですか?
A:20年ですね。もともとは戦場なんかを撮ってたんだけど、「何で人間は戦争をするんだろう」っていうのがあって。
大きな転機は92年。アマゾンへ行く機会があって、その時にアマゾンの森が徹底的に破壊されている様子を目の当たりにしまして、みんなに「これを伝えたい」っていうのと、環境破壊と紛争の関係も見えてきて──イラク戦争の時はあえて行きませんでした。戦争が起きている直中では、本質は何も見えないんです。取材用のツアーバスが出て、行けるところが限られていて、「ハイここで写真を撮ってください」みたいな感じ。それは僕のやりたい仕事ではない。戦争はある意味いろんなことの結果でしかない。結果には必ず原因があり、僕は『その原因』を見て仕事がしたいと思いましたね。
Q:では、その後イラクには行かれたんですか?
A:もうすぐ行きたいと思ってる。今ならゆっくり取材ができるし──自分の行きたいところへ行って、自分の選んだ対象を撮る、そういう取材をしたいですね。
Q:では最後に、この船で何を伝えたいですか?
A:偏見を持たないで、きちんと自分の目で見て自分の頭で考えてください、ということですね。自分自身で感じる、そういう訓練をしてほしいと思います。
(聞き手:小林君江)
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[ビクター・マトムさん(フォトグラファー)] |
南アフリカの大都市・ヨハネスブルグにあるタウンシップ・ソウェトで、黒人の子どもたちのために写真教室で教えている水先案内人、ビクター・マトムさん。
自身は新聞社のカメラマンとして居留地の黒人たちの生活を撮り続けています。そんなビクターさんにお話をうかがいました。
Q:まず初めにピースボートの印象について教えて下さい?
A:今回で6回目の乗船になります。最初に乗ったのは──思い出せません(笑)何度も乗船しているのは、世界の人々との交流活動はとても魅力的だし、賛同できることだから、ですね。
Q:南アフリカでは、黒人の子供たちのための写真教室をされているんですよね?
A:はい。写真教室は1995年から始めました。今は5歳から20代まで、64人に教えています。週3回、3つの時間帯に分けて木の下で教えています。
Q:──"木の下で"、ですか?
A:ええ、晴れの日は木の下で。雨の日はコンテナの中でやっています。大阪の方がプレゼントしてくださったんです。幅3メートル、長さ11メートルのコンテナなんですが、ドアが1つしかないので、風通しが悪くてとても暑いし、閉めると真っ暗になってしまうんです。
そこで、今、写真学校の新しい建物建設の計画があって、その資金援助を日本政府がしてくれるんですよ。
Q:実際、どんな風にして教えてるんですか?
A:そうですね…まず、最初に教えるのは、実は写真ではないんです。「好きなこと」「やり遂げたいこと」を考えさせます。そして、「絶対にかなえられるよ」と言って励ますんです。それから、テーマを与えて「君たちの心で撮ってきなさい」と言います。
Q:船内でも2回のレクチャーに加えて写真教室もやってくださいましたよね、企画の手応えはいかがですか?
A:──満足しています。写真のワークショップでは、私が1回目のレクチャーで言ったことをすっかり理解しているものもあって、素晴らしいと思いました。
Q:その写真教室でのテーマが『幸せとは?』でしたが、ズバリ!!ビクターさんにとっての『幸せ』とは何ですか?
A:『平和』がわたしにとっての幸せです。お互いを尊敬し合うことは落ち着きにつながります。そして、その落ち着きが平和につながり、私の幸せとなるのです。
(聞き手:水野聖子、野川環/通訳:三井邦稔、アース・ベネット)
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