水先案内人インタビュー
バックナンバーVol.3
[ピーター・オルワさん(ピーターバンドメンバー)]
 ピーターバンド・ライブやジャンベ、ダンス、そしてアフリカ関連の企画で、いよいよ船内を盛り上げて下さっているピーター・オルワさん。ラストライブのリハーサルでお忙しい中、丁寧に話してくださいました。

Q:ピースボートはもう何回か乗船されていますが、今回の手応えはどうしょう?

A:今回で4回目になりますが、回を重ねるごとにどんどん素晴らしくなってますね。こちらからやったことに対して必ずみんながいい反応を返してくれるので、もっとやろうという気持ちになって。みんなと交流しながら旅ができることが、素晴らしいですねぇ。

Q:ライブに始まって、「象の孤児院」の話まで、お忙しい中何本も企画をしてくださいましたね。

A:企画をするのは大変だけど、人のために役立つことができるのはうれしいです。本物の「喜び」というのは、心のガソリンになるものですから。

Q:いつもすごくたくさんの観客が集まりますが、緊張したりは?

A:──緊張はしないですよ。日本人はどんなことでも知りたいという気持ちを持っています。けれど本を読んで得られる情報はあくまベースで、実際はケニアも日本も日々変わっている。私の役目は、変化している状況を的確に伝えることだと思うんですねぇ。
 ケニアに来て、野生動物だけ見て帰るのは寂しすぎるので、ケニアの文化も見てもらいたい。見る、聞くだけでなく、全てのものを感じ取って帰ってほしいと思います。

Q:ところで、質問が前後するようですが、「ピーターバンド」は結成してどのくらいなんですか?

A:結成して15年です。

Q:15年──すごい!!では、最後にピースボートの好きなところを教えてください。

A:人間はコミュニケーションがないと進歩しない、というのが私の持論ですが、その「コミュニケーション」ができるところが、ピースボート。ピースボートは人との出会いとチャンスを与えてくれます。国境と人種を越えた船であり、自分の気持ちに素直になれる。
 クルーズを楽しむだけでは平和には繋がらないかも知れないけど、船を降りて世界を見て、活動する、平和を訴えることのできるピースボートはすごいです。
 とにかく何でも、行って、見て、知るという事が重要。ピースボートはあくまで骨組みであって、中身は乗ってるみんなが作っていくモノでしょう──種を落としたら、すごい大きな木となるチャンスを与えてくれる魅力のある船です。
(聞き手:野川環、大日向麻由子)
[角岡伸彦さん(ノンフィクションライター)]
 通称「ホルモン奉行」。一見、訳のわからない肩書きを述べる人が、「部落差別」なんていう小難しい話をする!?――なんじゃそりゃ、と思って講座を聞きに行った人は、まんまと奉行にやられた気がする…。今回のインタビューは、ノンフィクションライターの角岡伸彦さんです。

Q:ピースボートはどこで知りましたか?

A:学生の頃から知ってたよ。

Q:その時は、乗ってみようとは思われかったんですか?

A:うーん、思わなかった。高いし(笑)一人旅の方が好きだから。

Q:では、今回はピースボート側の要望があったから乗られた、ということなんでしょうか?

A:そうやね、基本的に呼ばれたところには行きたいと思てます。

Q:この船でやってみたいことは何でしょう?

A:『部落差別』を伝えることを通じて、世界の人とどうやって繋がるか――ええこと言うやろ(笑)

Q:はい…(笑)で、どうして『部落差別』なんですか?

A:僕はべつに、このテーマを自分で選んだわけじゃないですよ。自分は"部落民"やし、そう思いたくなくてもまわりからそう意識される。もちろん、そのことに「誇り」を持っているわけじゃない。そうでなくて"部落民"であることに、僕なりのこだわりがある、ということです。

Q:ところで、どうして『ホルモン奉行』なんていう名前を名乗るんですか??ホルモンが"部落の食文化"っていうことは講座で分かったんですけど…。そこに「奉行」を名乗る、ということはやっぱり何かを「成敗」しにいく、っていうことなんでしょうか?

A:――や、たいした意味はなくて、「鍋奉行」をひねっただけなんやけど…「裁く」ってよりは「仕切る」って感じにしたいと思って(笑)

Q:今回、『部落差別』について本当にたくさん語っていただいたわけですけど、角岡さん、ズバリ『差別』はなくなると思いますか?

A:なくなるよ。個別的な差別はね。だけど部落差別がなくなったとしても、どんどん新しい差別が出てくると思うから。根本的な『差別』の心は変わらんと思う。

Q:じゃあどうしたらいいんでしょう?

A:色々なこと、色々な人と関係をもっていくってことやね。物事って重層的で、決して単純じゃない。簡単に「差別者―被差別者」というふたつに分けて、あらゆる問題を論じることはできへんねん。だってそれは、僕が差別することもありうるってことやし。せやけど、今は差別とか歴史とかに無関心の人が多いと思う。そこがいかんのだと思う。
 すべてのことに自分が関わっていくのはもちろん不可能やけど、考え方としては、すべてのことに関わっていこうという姿勢はあっていいと思ってます。そう思ってる限り、自分の外側のモノと繋がっていくことはできる。要は、何でも考え方が大事やねん、ということです。

(聞き手:水野聖子

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