12月12日 この国のゆく末〜今、あなたが船に乗る意味〜/灰谷健次郎(作家) |
水先案内人講座のトップバッターをつとめられたのは、作家の灰谷健次郎さん。
ご自身がアジアを訪ねたときの経験や少年犯罪、また「日本人拉致事件」が明らかになって以降の報道など幅広いトピックを語りながら、「国と市民との関係」を問いかける講座になった。 |
「ある哲学者は『ある国において経済利潤の原理が強くなればなるほど、子ども・年寄り・病人などの弱い者には強い保護が加えられなければならない』といっています。それが、国の先進性の基準なのです。しかし、経済発展が進む一方で経済格差はどんどん広がり、かつてない苦しみを味わっている人がいる。それがアジア諸国の現状です。
そして、日本では『売れないから』という理由で、子どもの本の数が減りました。逆にある出版社は、少年法に抵触するにもかかわらず、『売れるから』という理由で『酒鬼薔薇』少年の顔写真を掲載しました。さらに『日本人拉致事件』については、かつて日本が朝鮮半島でおこなった強制連行に触れると『非国民』と呼ばれてしまう。しかし朝鮮半島から強制連行された人たちも、今回の拉致被害者と同じように苦しんだはずです。
私たちは自分を主張するだけでなく、人のことも知ろうとしなければいけません。コミュニケーションというのは、まず『聞く』ところから始まるのです。本来なら、こういうことを追究するのはジャーナリズムの役目です。しかし彼らがやらないのなら、市民が賢くなるしかない。国や権力というものが、市民にとって本当に有効なものなのかを点検していく必要があるのです」。
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