船内ニュース
10月8日 ゴランを知ってゴラン/ゴラン・ベージッチ(ジャーナリスト)
 旧ユーゴスラビア内戦のさなか、各政府による情報統制に抵抗したジャーナリスト、ゴラン・べージッチさん。彼は、仲間と共にアドレア海に「言論の自由号」というボートを出し、そこでラジオ局(ラジオボート)を立ちあげた。この講座では、旧ユーゴスラビアの内戦とそこでの情報操作について、そしてラジオボートの意義について映像を交えつつ紹介した。
 「旧ユーゴ中――つまり、民族・宗教の違う各地域から集まったスタッフらが立ちあげた『ラジオボート』は、当時のメディアでは初めて、次の3つを実践しました。
  まず、難民たちのナマの声を放送し続けたことにより、何千人もの難民を別の国に住む家族と引き合 わすことができたこと。そして、偏らない『事実』を報道することに専念できたこと。そして、当時発表の場がなかった知識人やNGOに『意見を言う場』を提供できたことです。ラジオには、戦争そのものを止めることはできませんでした。しかしラジオボートは、民族・宗教の違いをこえ『共にひとつのことに取り組むことができる』というモデルケースだった、と思います。
 今なお「旧ユーゴ」は、難民問題や戦争犯罪への対処など、さまざまな問題を抱えています。また、大きな経済的発展が見られないこともあってか、多くの人々は戦後の『大きな絶望』を引きずったままです。民族間の憎しみも消え去ってはおらず、いまだ『戦争状態』にあるとも言えます。そこから脱出するために、旧ユーゴの人々はまず『自分の国で何が起こってきたのか』ということを知らな ければいけないのです」
(西野恵美)
海とスラムが希望の印/ピラール・チャベス(IS)
 コロンビアから参加したIS・ピラール・チャベスさんによる講座。コロンビアでは、政府とそれに対立するグループなどが混じりあった争いが50年来絶えない。貧富の差などの問題も大きくなる一方だ。そんな中、ピラールは地域独自のメディアを使ってスラム地 区に暮らす若者たちの「生きる希望」を見つける手助けをしている、という。そんな彼女が、コロンビアの歴史と現状、そして彼女自身の思いを語ってくれた。
 『コロンビアで、貧しさから抜け出すための一つの手段となっているのが『麻薬栽培』です。それまで漁業や農業で稼いでいた村人が、麻薬組織の勧めによって、麻薬栽培を始めます。麻薬組織は、貧しい人々を経済的・社会的に援助しているかのようなサイクルを つくっていくので、一部の村からは歓迎されることもあるくらいです。
  そんな中、若者たちは、以前のように働かなくてもお金が入ってくるため、昼間からバーなどで過ごすようになってしまいます。その一方、そもそも『社会的不平等』が貧富の差をうみ、村がこん な状況になっているのにもかかわらず、政府は住民いわく『何もしてくれない』ため、市民からの信頼を失っている状況です。
  しかしこんな状況でも、私は自分の国を愛しています。いまは、地域住民が独自におこした『コミュニティ・メディア』を使い、スラムの若者たちと共に、環境・スポーツ・音楽などのさまざまな分野で活動しています。それによってお金を得ることはできませんが、人々のために働けるという『生きがい』を得られるのです。」
(関口裕美)
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