18世紀に英国政府が政治犯を収容する「流刑地」となり、そののちも世界中から移り住んできた大勢の人々が築いた「多民族国家」がオーストラリア。20世紀初頭には「白人の国家」をうたう「白豪主義」が台頭したものの、近年は移民の受け入れにも積極的な態度を見せてきた。特にシドニーは、町中にもさまざまのエスニック・レストランが並ぶ多民族シティとして名高い。
いっぽう、紀元前からこの地に暮らしていた先住民族アボリジニは、先祖から伝えられた土地を奪われ、厳しい差別を受けてきた。近年になってようやく土地への権利などを認める動きが出ているが、いまだ差別は根強い。2001年の総選挙では、移民受け入れに難色を示すタカ派政党が勝利したこともあって、「多民族共存」の揺らぎを指摘する声もある。
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