『楽園』タヒチに生きる人たち
 美しい海が広がり、「楽園」というイメージの強いタヒチ。しかし、フランス政府によって、土地や伝統的文化を奪われた先住民族のマオヒや、フランスがおこなった核実験の被害に苦しむ人々もいる。
  これは、マオヒの伝統的な歓迎を受け、彼らの文化に触れつつ、核被害などに苦しむ人たちの話を直接聞くというコース。あらためて「タヒチ」という土地について、いろんな面から考えさせられた2日間だった。
 コミュニティ「テヒバレラハタ(雲を飛びゆく人々という意味)」の案内のもと、ハムタ谷の「マラエ」を訪れた。「マラエ」とは石を積んでつくった祭壇のようなもので、その石は個人それぞれを象徴しているという。
  まず、「木」「風」「水」「平和」の神々を まつった祭壇での歓迎セレモニー。参加者もそれぞれ「平和」を象徴するものを持参し、祭壇に捧げていた
 う〜ん、おいしいっ!!真っ黄色に熟れたパイナップルの味は最高!甘くてジューシーなこのパイナップルは、もちろんこの土地でとれたもの。芯まで食べられるほど熟れている。あまりのおいしさに、みんな夢中でかぶりついていた。
 2日目。反核・独立を訴える自治体として知られるファアア市役所へ。フランスの核実験による被爆者のため活動するNGO「ムルロアと私達」のジョン・ドゥームさんの話を聞いた。
  「フランス政府はあくまで『クリーンな核実験』だと主張しています。けれども、実 験場で働いていた人々の間には癌の発生率が高く、他にも身体に何らかの影響が出ているというデータがあるのです」。
  また、実験場で働いた経験を持ち、今まさに病気と戦っている人からも話を聞くことが出来た。多くの人と土地を傷つけてまでおこなわれる「核実験」に、一体どんな価値があるのだろうと疑わずにはいられない。
 フランス領になる以前にタヒチを治めていた「ポマレ王朝」の子孫であるプリンス・ジョアンビルさんから、タヒチの土地問題に関する話を聞くことができた。
  「それまでマオヒのコミュニティーで所有していた土地は、フランスの巧みな手段によって次々と奪われていきました。だが、もともとマオヒには『記録を残す』という文化がなく、フランスに土地を奪われても自分たちのものだと証明するものがないのです。今もなお、土地を巡る問題は解決されていません」。
(関口裕美)
パペーテ寄港地レポートインデックスへ39回クルーズレポートインデックスへ