旅の荷物は軽い方がいい /キム・ヨン(同志社大学講師)
 旅の中で一番困るのが荷物。重いと動くのが大変になり、整理するのにも時間がかかります。「人生においても同じことが言える」という金纓(キム・ヨン)さんが、世界中を旅してきた体験をもとに、「旅の荷物」について語ってくれました。
 「旅の目的、形によっても荷物の量は変わって来ますが、一人旅を身軽にやろうと思ったら、やはり荷物は少ない方がいいです。滞在型の旅などでしたら、荷物が多くても、選択の楽しみがあったり、時には気分転換にもなったりと、楽しく便利な面もありますが、移動にはとにかく不便ですね。
 人生においてもいろいろな“もの”を買うためにはなかなか大変な面があります。“もの”を買うために働き、それを維持するためにお金がかかるのでまた働く。この狭い日本でどうして”もの”を維持しようとするのでしょうか?“もの”が減ると、とても自由で心まで軽くなった気がします。日本人はお金を持ってはいても、それを使うことも楽しむことも、分けることも下手です。
 お金がなければ楽しくない。不景気だから街に活気がないと言います。では、例えば南米の人たちはどうなのでしょう。その日の食べ物にさえ困っていても彼らは陽気に踊り、街にはとても活気があります。日本人にもう少し他人と分かち合う心があれば、もっと多くの貧しく飢えに苦しむ人たちが食べられるようになります。今の日本には世界と分かち合うという心が必要だと思います。」
(笹井かおり)
非戦〜世界から未来へ〜/田中優(環境活動家)
 2001年9月11日。ニューヨークで多くの死者を出した、同時多発テロ事件。この悲劇は何故起きたのか、そもそもテロや戦争の起こる理由とは何なのか。坂本龍一氏監修のもと著名人が多数執筆し、優さんも執筆者の一人としてその名を連ねている『非戦』からタイトルを取った、田中優さんの今クルーズ最後の講座。オーストラリア人・アメリカ人のゲストを交えて、「戦争」や「テロ」について議論を交わしました。
 「アフガニスタンではこの冬、100万人が死亡する状況にあるといわれています。しかし、そこに暮らす人々は、何故自分たちが戦争に巻き込まれているのか、その理由さえも知らないのです。今回の戦争で、アフガニスタン国土には、これまでにすでに埋設されていた1000万個の地雷に加え、さらに凶悪なクラスター爆弾がばらまかれました。子どもたちを中心に毎日悲劇が起きています。
 この戦争の背景には、石油利権とアメリカの軍需産業の異常な繁栄ぶりがあります。アフガニスタンは、莫大な石油資源が眠る中央アジアからのパイプラインを通す場所として注目されているところです。そして、ブッシュ大統領は就任当初から石油業界との癒着を指摘されていますが、驚くことに、石油産業と軍需産業という2つの業界の重役は同じメンバーで構成されているのです。
 今後の新しい社会をつくっていくためには、石油に頼らない社会づくり、軍事に頼らない安全保障、そして異常な軍事支出額を誇るアメリカをどのように変えていくかが焦点となるでしょう。」
(藤田久美子)
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