10月7日  ▼エリトリアの国づくりのためにできること
現在国の新しい法律を作っているエリトリアの法務省のため、日本とエリトリアの法律をリサーチするというボランティア活動を行う大場寿人さんより、現地で活動する中で見えてきたエリトリアの今の姿、そして、ピースボートのプロジェクト活動のひとつ「エリトリアチーム」が行ってきたこれまで、そしてこれからの活動について話していただきました。
「独立を自らの力で勝ち取った後、『自分たちの国を自分たちで造りたい』とエリトリアの人々は強く願い、援助にしてもむやみに受け入れるのでなく、自国の方針に口を出さないのであれば受け入れる姿勢を保ってきました。その国造りのモットーとは、『教育』『環境』『持続可能な発展』の3点。
途上国の多くが目先の発展に気を取られがちな中、これまでの失敗に学ぼうとする姿勢がここで見ることができます。そして1998年、20世紀最後の国家間紛争となったエチオピアとの戦争ですが、その理由は両国共に『国をまとめるために敵を作る必要があった』からとも言われているそうで、その点から『無意味な戦争』とも呼ばれています。
僕が今年7月に現地入りする以前に聞いていた『国造りに一直線』とは違う面が、これによって生まれたように感じます。誇り高かった国造りへの意識が疲弊してきているのです。どんな国になってゆくのか、今、エリトリアはその分岐点に立たされているのかもしれません。 ピースボートのプロジェクト活動のひとつ『エリトリアチーム』では現在、エリトリアガイドブック作りが進行しています。外国人である僕らが、すぐに何かをするのは非常に難しいことです。今はまず、エリトリアの情報を集め、それを多くの人と共有し、そして現地に降り立ち、またエリトリアの人々を日本に招き、経験や価値観を共有することがその第一歩だと考えています。」
レイラとディェンから見たユーゴスラビア/レイラ・バイラモヴィッチ(IS ボスニア
・ヘルツェゴビナ出身)/ディェン・スタンコビッチ(IS セルビア出身)
旧ユーゴ内戦、そして数十万の難民を出したコソボ危機。激動の1990年代に、旧ユーゴスラビアで何があったのか?IS(国際奨学生)でボスニア・ヘルツェゴビナ出身のレイラとセルビア出身のディェンが、当時の旧ユーゴについて、そして彼らが現在関わっている活動についても語ってくれました。
ディェン:「国連による経済封鎖があった1993年、セルビアはインフレがひどく経済状態は最悪でした。人は信じ合う事を忘れ、さまざまな価値観が消失した時期でもありました。
私も、市民デモに参加して政府に対する反逆者として警察に殴られた事もあります。しかし、そのようなつらい時期を乗り越え、今では若者たちが将来に対する希望を持てるようになりました。
私自身もセルビアにおける市民社会の形成のため、文部省による教育普及の手伝いをするNGOで活動しています。」

レイラ:
「戦争中は、NGOは人道的な団体という意識でしかなかったのですが、戦争が終わって、NGO活動(市民活動)からしか社会を直せないと考えるようになりました。
現在、ボスニアでは若者の62%が国外へ出たいと思っています。でも、ボスニアの若者に必要なことは協力する事だと思います。ですから私は国にとどまって新しい未来を作るため、現在、NGO団体に所属して活動しています。」
よくわかる旧ユーゴ入門〜殺し合う市民達〜
/吉岡達也(ピースボートスタッフ)
世界の人たちは、言葉も宗教も違う中でどのように共存してゆこうとしているのか?そして、その「共存」が崩れ、殺し合いが始まってしまう原因は何なのか?
――ひとつの「国家」の中でいくつもの民族が争いあった旧ユーゴ内戦は、それらを象徴的に表していたともいえる。ピースボートスタッフ吉岡達也が、旧ユーゴについて分かりやすく解説した。
「1999年にNATO軍がコソボに空爆を開始したとき、当時のクリントン米大統領は、アルバニア人を助けるための人道的な介入であると言いました。私は、それではなぜ、国際社会が1990年の段階で明らかになっていたコソボの問題をほったらかしにしていたのかと疑問に思います。
正直、多くの人々の命を救うために何が一番良い方法だったのかは、今でもわかりません。しかし、旧 ユーゴの戦争はとても大事なことを表しています。
それは、『もし10年前にコソボの問題を国際社会が解 決していたら』、『もし国際社会がユーゴという多民族国家の脆弱さを理解し、クロアチアの独立を即時 に認めるのでなく、まずもう少し話し合うことを提案していたら』、20万人のボスニアの人達は死ななくて済んだのではないかという二つ大きなの『if』です。この二つの『if』を考えることは、旧ユーゴ を考える時、そして地球的規模で多民族共存を考える時にも、決して忘れてはいけないことだと思います。」
(北口)
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