暴力のない世界へ/クレム・マッカートニー(平和学者)
クレム・マッカートニーさんは北アイルランド出身の平和学者であり、紛争解決の専門家でもあります。
マッカートニーさんからの「一つのオレンジをみんなで分かち合うには?」「平和文化を創造するキーワードと言われて何を想像しますか?」の問いかけに頭をひねりつつ、それぞれが平和について思いを巡らせる講座となりました。
「ボートの舳先に一人たたずみ、きれいな月を見上げているだけなら、人は平和な気分でいられるでしょう。しかし、人はきれいな月もいつしか見飽きて、一人でいるよりも他の人と一緒にいたいと思うようになります。
ところが、「人と一緒にいる」ことは、決して簡単なことではありません。ひとは一人一人が違う個性を持っている上、広く世界を見渡せば、そこには様々な文化を持った人たちが暮らしています。だから、もしもお互いを理解しあいたいと思えば、コミュニケーションをもって互いの違いを認めあうことが大切なのです。
かつて私たちは、違う考え方をする人たちを、武力や差別という暴力で治めてきました。そしてそれは、私たちが学校などで学んできた文化でもありました。しかし、もしも私たちが命を大切にする文化を目指すのであれば、互いの違いを理解した上で話し合い、未来の社会をいっしょに考えていくことが大切です。従来の方法にこだわることなく、新しいルールを作りあげたとき、平和と非暴力の文化が築かれるのです。」
(石橋)
エリトリアってどんな国?/吉岡達也・大場寿人(ピースボートスタッフ)
人口は推計260万〜350万人、面積は日本の約3分の1という小さな国エリトリアは、9民族3宗教が共存する多民族国家でもあります。
ピースボートがそんなエリトリアへ訪れるのは、私たちの訪問で8度目。エリトリアの魅力とはなにか?エリトリア入門編として、ピースボートスタッフ吉岡達也と、今年の7月からエリトリアにて法律支援のボランティアを行う大場寿人さんの2名より、歴史・民族・文化そして30年間にも及んだ独立戦争についても紹介してもらいました。
「エリトリアが隣国エチオピアから独立し、正式に国として認められたのは1993年のことです。国として生まれてから8年目の“アフリカで最も若い国”なのです。
1962年のエチオピアによる強制併合から30年もの間続いた独立戦争では、東西冷戦下でありながら、EPLF(エリトリア人民解放戦線)の兵士達は米ソどちらの支援も受けずに戦い抜きました。それは20万人の死者と75万人の難民が出る激しい戦いでした。 そんなエリトリアにピースボートが初めて訪れたのは1995年、独立からまだ2年目のことでした。
援助に頼りっきりの国が多いアフリカ諸国の中にあって、『AID IS AIDS(援助はエイズである)』と言い切り、自国の方針に口出しするような援助ならいらない、自立した発展をめざしていたのです。そんな国の『国造り』のために何が出来るだろうかと考え、現在はピースボートのプロジェクト活動のひとつである『エリトリアチーム』を中心に、法整備支援などを行っているところです。」
(泉)
なぜ?なに?イスラム!!/ムラト・フダヴェルディ(天体学者)
リナ・R・ザラティモ(国際奨学生)
ヤハヤ・スレーマン(リビア語講師)
これから私たちが訪れるイスラム文化圏について知るための入門編。ゲストにイスラム教徒の3名を迎え、その成り立ちと歴史、戒律、生活、そして会場より「イスラム教からイメージする事柄」 を上げてもらい、それぞれについても解説してもらいました。
Q:一夫多妻はホントに許されるの?
A:「コーラン(イスラム教の教典)では、男性は1人以上、そして4名以内の女性と結婚して良いとされていますが、その全てを平等に扱わなくてはならないともされています。
また、それが出来ないのであれば1人とのみ結婚するようにとも書かれているのです。ですから、実際には1人以上の女性と結婚している人はほとんどいないのです。
また、一夫多妻が単に男性の楽しみだと考えている人もいるようですが、例えば戦後、男性の数が一気に少なくなってしまった際、社会的バランスのため1人以上の女性を娶る場合もあるのです。」
Q:
異なる文化圏で戒律を守るのは大変ではありませんか?
A
:「自国で戒律を守ることはさして大変なことではありません。ところがそれが異なる文化圏にいると非常に困難になってきます。
例えば豚肉を食べてはいけないのですが、わざわざ食事をする度に確認するのが億劫となり、ベジタリアンの様な食生活になる人もいます。また、1日に5回のお祈りは、体をキレイにし、場所もキレイにし、メッカの方角を向き、決められた時間内で行わなくてはなりません。
ところが、例えばこうして船に乗船していたりすると、それらを必ず行うことは困難になってしまいます。それでも何とか戒律を守ろうとする人も、そうでない人もいます。全てのムスリムがこうだという基準があるわけではなく、どこまで戒律に忠実になるかは、人それぞれだともいえるのです。」
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