住んでみなくちゃわからないベトナム、フエの秘密
/小山道夫(ベトナムの「子どもの家」を支える会・ベトナム事務所長)
元小学校教諭の小山道夫さん。7年前、45歳の時に訪れたベトナム、フエの路上で、物乞いをして暮らす子供達に出会ったのが7年前。それをきっかけに学校を辞め、ベトナムに移った後は、家族と暮らすことの出来ない子供達のために「フエ子どもの家」を設立。また、ベトナム戦争の後遺症や地雷で傷ついた人達に、手術やリハビリを提供する活動を続けている。今回は、ベトナムで暮らした7年半の間に体験したことを中心に語っていただいた。
「私にとってのベトナムは『大好きだけど大嫌い』な国なんです。ただ貧しいのとは違う素晴らしい物があるということを、生活をしていく中で気づかされました。例えば30〜40年前までは日本にも当たり前のようにあった、地域の人々が互いに励まし、助け合うコミュニティーが未だにしっかりと存在しているのです。
しかしその反面フエに住んでみて、ベトナム戦争時に分断された南北の大きな問題にも気づかされました。ベトナム革命時に解放軍にいたかどうかで、人間的に大きく差別されているのです。5年前ピースボートが車椅子を運んできたときの ことです。多くの人が車椅子を求めて集まり、そこには52名の膝から下が無い人達も含まれていました。彼らは戦争当時『南』と呼ばれる地域に住んでいたがために、戦場で地雷被害に遭ったにも関わらず、北ベトナムと解放戦線によりベトナムが統一されたあとの25年間、いっさいの保障を受けることができずにいます。結婚することもなく、路上の水たまりの中でもがきながら物乞いをすることでしか生きていくことができないのです。そういう背景があるにも関わらず、私が初めて彼らを路上で見かけたとき、『障害を見せ物にしている』と嫌気を感じてしまった自分を情けないと思っています。」
(石橋)
 
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