NGO共同声明
「東北アジア非核地帯」を日朝交渉のテーブルへ


 2002年9月17日の日朝ピョンヤン宣言で、日朝両首脳は、朝鮮半島の核問題と安全保障問題に関して、「すべての国際的合意の遵守」すること、「対話を促進し問題解決を図る」ことで一致しました。日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の双方が共通の認識を確認したことは、大きな成果でありました。しかし、10月16日には、米国国務省が、北朝鮮が核開発計画を認めたと発表しました。私たちは、東北アジアの平和と安全保障に取り組むNGOとして、次のことを訴えます。

1) 北朝鮮による情報公開を求めます
 北朝鮮の核開発が事実であれば、これは、「核不拡散条約(NPT)」、1994年の「米朝枠組み合意」、1992年の「朝鮮半島非核化共同宣言」など、主要な国際的合意に明らかに違反します。これは、東北アジア地域安全保障の土台を崩す行為であり、私たちは強く抗議するものです。どこまでが真相なのか、開発が事実だとすればどのような段階にあるのか、徹底的な事実の究明が必要です。まず、北朝鮮政府に対して、計画に関する情報を直ちに公開することを求めます。

2) 米国は北朝鮮敵視政策を撤回すべきです
 私たちは、同時に、米国による数々の国際的合意違反も指摘しなければなりません。もっとも重要なことは、2000年10月に到達していた「両国は、いずれの側も他方に対して敵対的な意図を持たない」、「過去の敵意を払拭した新しい関係を建設する」という合意を、ブッシュ政権が一方的に踏みにじったことです。米国は、「悪の枢軸」発言、「核態勢見直し(NPR)」、「国家安全保障戦略」などを通じて、北朝鮮に対する核使用、先制攻撃も示唆しました。ブッシュ政権の即時の査察要求は、米朝枠組み合意違反の要求です。私たちは、米国が枠組み合意の上に積み重ねられてきた軌道に戻り、北朝鮮への敵視政策を撤回することを求めます。また、NPT条約においては、米国自身も核兵器廃絶が義務づけられていることを忘れてはなりません。

3) 日朝交渉のテーブルに「東北アジア非核地帯」構想を乗せることを日朝両政府に求めます
 米国流の威嚇外交では、問題を解決できません。私たちは、日朝両政府に対して、ともに平和と安全保障を構築するという立場での誠実な対話の継続を求めます。
 その際、私たちは、東北アジア地域全体の非核化を求める議論の中にこそ、真の解決策が見出せると確信します。日朝両政府は、国交正常化交渉のなかで、「東北アジア非核地帯」の建設を、議題として取り上げるべきです。東北アジア非核地帯の建設こそが、日朝ピョンヤン宣言で合意された考え方の具体的な履行であり、信頼醸成を通じた東北アジア地域の共通の安全保障への第一歩となります。

 私たちは、日本がヒロシマ・ナガサキへの原爆投下という惨禍を経験した被爆国であること、そして、その多数の犠牲者が日本と朝鮮半島で今も苦しみ続けていることを踏まえて、東北アジア地域の非核地帯へのイニシアティブを発揮することを、日本政府に強く要求するものです。
 私たちは、これまで、韓国のNGOと「東北アジアの平和と非核化会議」を共催したり、北朝鮮の民間団体「朝鮮反核平和委員会」と対話を続けてきました。この機会に、強力な運動を展開したいと考えています。引き続き、韓国のNGOや、北朝鮮の関係団体と共同での取り組みを追求していきます。
2002年11月7日
NPO法人「ピースデポ」代表 梅林宏道
軍事ジャーナリスト 前田哲男
国際交流NGO「ピースボート」共同代表 櫛渕万里


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担当:中原・櫛渕まで
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