エリトリア日記
「エリトリア日記」Vol.1 7月24日(火)(by 大場寿人)

アスマラのシンボル、教会
どうも、はじめまして。僕は先週7月20日からエリトリアに来て、11月のあたままでこちらに滞在しようと思っています。エリトリアという国はアフリカの東部「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置し、1991年に事実上の独立を果たしたばかりの国です。日本ではあまりなじみがないかもしれません。そんな国、エリトリアからこれから毎週メールを配信して、少しでもこの国のことを日本の皆さんにお届けし、エリトリアという国を通して日本の中で色んな問題提起ができればと思います。
僕自身まだエリトリアという国についてあまりよくは分かりません。しかし、これからのエリトリア生活を通して、そしてエリトリアの国造りに励む人々との交流を通じて、なにか日本が失ってしまったもの、日本人が今一度見直さなければいけないのではないかと思われること、そんなことを発見することができればと思うのです。

ゼリ君と太田君
今日は、7月24日。エリトリアに到着して4日目。来た直後に体調を壊し風邪で寝込むなどしてしまい、まだあまり活動はできていません。が、以前、日本に招いたエリトリアの若い法律家ゼリセナイ君(以下ゼリ君、詳細は「ロースクールプロジェクト2001」参照)にアスマラ大学の学生を紹介してもらい彼らからエリトリアのことを色々聞かせてもらっています。例えば、ナショナルサービス。今、日本でもボランティアの義務活動少し話題になっていますよね。このナショナルサービス、ゼリ君のように優秀な学生は大学での講師などを務めることもありますが、その他主に重要になってくるものに兵役があります。

エリトリアは91年に独立戦争を終えてからも、98年から昨年の2000年12月まで隣国エチオピアとの間で国境をめぐり戦争をしていましたが、その間には多くの学生が兵役に服していました。法学部の学生のBereket君も実際射撃訓練などを受けてきたとのことです(状況によってはフロントラインに派遣されることもあったようです)。言うなれば人殺しのための訓練ですよね。実際その辺の強制的な兵役義務についてどう思うか聞いたところ、国を守るためにはそれも必要だと言います。戦争をするにはたくさんの兵隊が必要だが、エリトリアのように金のない国ではたくさんの軍人を雇うお金などはない、だから学生などがナショナルサービスとして兵役に服することも必要なのだ、と。さらに、選択の余地があればそれに対して良いの悪いのと考えられるけど、エチオピアに攻められているわけだし選択の余地がないのだからそれについて良いの悪いの言っても仕方がないのだ、と。
なんなんでしょう。戦争は否定されるべものであることは違いないと思います。だけども、もし自分の国が他の国に攻め入られたら、どうなるのだろう。もの凄く単純な問題です。しかし、この問題について僕自身あまりにも何も考えてこなかったと思います。しかし彼らにとってはそれは日常の問題なのです。教科書の上での問題ではなく自分自身の生活の中にある問題なのですよね。エリトリア生活の初っ端からいきなり重い問題に直面してしまいました。少なくとも今は、そのことに対して答を出すということよりも、そこの温度差とうか生活環境の違いについて認識をしておくという程度でとどめておこうと思います。

大場君と子どもたち
あと、多くの学生が関心も持っていることとしていかに経済発展を行うか、という問題があります。特に日本の戦後の経済復興について関心が高いようです。法学部生のSamsom君からも日本が戦後の経済復興を成功させた理由は何だと思うかと聞かれました。何なのでしょうか。とりあえず、日本人の勤勉な性格(真否の程は分かりませんが…)と平和憲法による政策(軍隊維持にかかる労力を他の方面に使うことができたこと。とはいえ実際は世界でも指折りの「軍隊」を持っているのですが…)ではないか、と答えてみました。あとは科学技術の分野で多くの優秀な人材を育てることができたこと(または日本人の得意とする「真似」の文化を科学技術の分野で開花させることができたこと、ということもできるでしょうか)なのですかね。まあ、僕の答はどうでもいいにせよ、とにかく彼らが日本の戦後復興の過程に高い関心をもっていることは感じることができました。我々日本人としては、その日本の戦後復興の成功(同時にその過程で経験した多くの失敗)をエリトリアのような途上国にいかに還元していくかということを真剣に考える必要があるのではないかと、改めて痛切に感じることができました。

私達エリトリアチームは、まさにそういった問題意識の上にたってエリトリアに対する支援活動を行っています。そして今回僕達は、その中でも特に法律という分野に的を絞って、エリトリアの国造りに対しいかに我々日本人の経験を伝え彼らの国造りに役立ててもらうかということを考えています。そしてその活動を通じてもう一度日本のことについて再考する機会を作るということをしていきたいと思っています。実際のところどこまで彼らの力になることができるか、それはやってみなければ分かりませんが、これからこの日記を通してそんな活動の様子を皆さんにお伝えしていきたいと思っています。
また、法律に関するプロジェクトの他にも、様々な問題(たとえば環境や家族の絆など)についてエリトリアの人々にインタビューをしていきます。そしてそれと同じ問題について日本の人々にもインタビューをしていき、両国の比較を通じて日本の将来を考える、なんてこともしていきたいと思っています。 

今はエリトリアに着いたばかりで、ホテルの水も出ず到着以来一度もシャワーを浴びていない(トイレも3回に1回くらいしか流れない)という状況で、日本でのノホホン暮らしに慣れてしまった体にはいささかしんどいものではありますが、こちらの人の明るさというか素直そうなところというか、とても気持ちがいい。近所の雑貨屋では、何も言っていないのに9ナクファの水を8ナクファにディスカウントしてくれたり、ただ水をくれって言っているだけなのに行く度にティグリニア語を教えてくれたり、なんとも不思議な生活をしています。いままでの旅ではなかった空気がここにはあります。なんかほんと一つの社会って感じがします。これからどんどんその「一つの社会」の中にもぐりこんでみたいと思います。これからの「エリトリア日記」楽しみにしていてください。これから3ヶ月のエリトリア生活。様々な対話を通じて、色んな経験・感動をもって帰りたいと思います。 
それでは今日はこのへんで。
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