11月26日  ▼平和学とは何か?
/ヨハン・ガルトゥング(TRANSCEND代表)、西村文子(国際政治学者)
平和の反対は「暴力」と語るのは、50年にわたり平和学を研究してきたヨハンガルトゥングさん。現代社会は自然、性別、世代、階級、人種、民族、国家の問題が層のように重なり、暴力を作り出す土壌をより複雑にしています。そんな中、すべての人が「平和」を感じるためにはどうすればいいのか。具体的な事例も交えてお話ししていただきました。
「まず暴力には3つのタイプがあります。一つ目は『直接的暴力』で、肉体に直接危害を加えるものをいい、戦争もこのタイプに含まれます。
二つ目は『構造的暴力』で、加害者をはっきりと目にすることができないのに傷つけられて死んでいく、貧困地域の人たちがこれによる被害者にあたります。世界には一日1ドル以下で生活している人が17億人いるといわれ、言い換えれば生きていくために必要な衣食住と医療を手に入れられない人がそれだけいるともいえます。
実際、この構造的暴力による犠牲者は一日に10万人、一年間では3650万人にものぼります。第二次世界大戦中、1940年からの5年間の死者は4500万人、一年間になおすと900万人でした。構造的暴力で死んでいく人はその4倍にものぼるということになるのです。
そして、三つ目に『文化的暴力』がありますが、これは直接的暴力と構造的暴力を正当化するために使われる暴力です。自分たちが、神によって世界のリーダーであることを運命付けられているとか、近隣諸国を言いなりにさせるのも使命だとかいうふうに考える文化のことです。暴力による犠牲者を無くし、平和の文化を築くためには、たとえ政治的意見が違っても人間を人間として尊重し、もし対立が解消されていなければ、それを根本から転換するということが大切です。そのためには人間としての共感、イマジネーションが欠かせません。そして平和的なネットワークを築いていくこともとても大切なことなのです。」
(石橋)
「フェリペが語るコロンビア〜楽園での戦争〜」
/フェリペ・オスピナ(語学講師)
船内でスペイン語講師をつとめるコロンビア出身のフェリペ・オスピナさんに、祖国の豊かな自然環境と文化、またゲリラ組織と政府軍が武力闘争を繰り返すという現状についてスライドショーも交えてお話ししていただきました。
「内戦ともいうべき状態を納めるには、我々コロンビアの国民たちが強く団結し平和を求める運動を起こし、各ゲリラグループとの粘り強い交渉を行う事が大切だと思います。平和という状態は、政府、国民、ゲリラそれぞれにとって理想の状態があると思います。
私たちはそれを一つ一つ理解しなければいけません。一種の治安、秩序があるということ、言論の自由が保障されているということはとても大切な事です。コロンビアにおいては麻薬密輸ゲリラが壊滅されない限り平和はやってこないでしょう。それには麻薬の消費国がより厳しい法律をもって麻薬に対するか、いっそ麻薬の合法化をすべきではないでしょうか。」
(小林)
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