1月16日  ▼人は何故旅をするのか/伊藤千尋(朝日新聞記者)
32回クルーズの記念すべき第一回目の講座となったのは、朝日新聞の中米支局長を務め、これまでに訪れた国は60各国以上という外報部記者の伊藤千尋さん。まさに旅に出たばかりの参加者に向けて、「人は何故旅をするのか?」についてお話ししていただいた。
「僕が初めて海外旅行で行った先はキューバでした。今でこそ若者が気軽に海外旅行に行けるような時代になりましたが、当時、それもキューバへ何故僕が旅したのか。それは『日本から遠いところへ、そして違う所へ行きたい』という理由からです。そうすることによって日本の良いところ、また悪いところも見えてくるのではないかと考えたからです。
例えば人間が一つの社会にとどまり続けたら、その社会に反する考えができない、ひいては自分が自分の意見を持てない人間になってしまうはずです。日本人は旅行がとても好きですよね。それはつまり窮屈な世界から逃げ出したい、新たな物を見つけたいという意識の現れではないでしょうか。
過去に流浪の民『ジプシー(ロマ)』について取材をしたことがあるのですが、彼らに、なぜ迫害を受けながら決して楽ではない旅を続けるのかと質問をぶつけたところ『一カ所にいると人間は腐る。だから我々は新たな土地を求めるのだ。』と答えたのです。僕はそこでも、新しい地は新しい自分を作るのだと確信したのを憶えています。
そして、彼らと共に生活した中で印象的な言葉があります。『空には人間の数だけ星がある。そしてこの空に大きく輝く星こそ俺なんだ』。果たして今の日本に、どれだけの人間がそう言いきることができるでしょうか?
旅に出るといってもただそれだけでは意味を持ちません。自分で吸い込む努力をしない限りは何も変わってはいきません。これからみなさんが寄港する国にすむ人の多くは、必死に苦しい生活の中を生きています。そういう地へ行くみなさんは、彼らに比べてまだまだたくさんの事ができるはずです。そうでなければ彼らにとっても、自分にとっても申し訳がない。新たな自分を作るため、輝かせるため、そして周りをも輝かせるため旅に出てください。そしてあなたの『大きく輝く星』を見つけてください。みなさんの旅は始まったばかりです。 」
 
ピースボートを100倍楽しむ方法
ピースボートの旅は「みんなが主役」、ということで、航海初日にさっそく開かれたこの企画。これから活動を開始する様々なプロジェクトチームが、「我先に!」と、スタッフ募集の呼びかけを行った。
各種船内イベントの企画・運営を行う「ディレクターズチーム」、船内唯一の情報源となる船内新聞を作る「新聞局」、クルーズの様子をインターネット上で世界に向けて発信する「スラッシュプロジェクト」、ダンスパフォーマンスを通じて平和のメッセージを伝える「チームユネスコ」、訪れる寄港地へ援助物資を届けて人と人のつながりを生み出す「UPA援助チーム」などなど。
チームごとに分かれての分科会では、 どうやって「オモシロイ」ものを作っていこうかと、たくさんの人たちが遅くまで語り合っていた。
 
オリエンテーション
晴海での出航の際に流された曲(「Thank you my road」)をBGMに、これから訪れる各寄港地のスライドショーで始まった船内生活オリエンテーション。
まずは、ピースボートスタッフの木瀬からのご挨拶。「船内企画などの情報は毎朝発行される船内新聞『CONTI輪』で確認を」といった基本的な注意事項にはじまり、「船内のことをよく知るには迷子になるのが早道。船内迷子になった回数が多いほど、その後の生活には役立つもんです」といった、経験豊かなスタッフならではの、笑いを交えた「裏情報」も登場した。
ついにスタートした93日間の船旅。船内で、そして16の寄港地で、参加者それぞれに多くの出会いと新たな体験が待っている。
 
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