▼キプロス島の平和に向けて▼
 29年前の7月20日、トルコ軍の侵攻をきっかけとして、キプロスは、トルコ系の北キプロス・トルコ共和国(北側)と、ギリシャ系のキプロス共和国(南側)に分断された。そして、2003年7月20日、ピースボートはキプロス・リマソールに入港――南北の統一、そして人々の共生に向け取り組む人たちと交流するこのプログラムは、この国が今まさに抱えている問題を「肌で感じる」ものだった。
 ここは、南北を分断する「チェックポイント」の手前。キプロス分断の際、たくさんの家族が離ればなれになった。家族を失った人・今もなお行方不明のままの人々の家族がこの日、チェックポイント前で抗議のハンガーストライキをおこなっていた。分断から約30年。彼女たちのいまだ消えない悲しみと怒りを、目の当たりにした。
 今年4月、一定の制限があるものの両方の行き来ができるようになっては、いた。しかし私たちは、チェックポイントを通過してトルコ側キプロスを訪れることは出来なかった。特別な「分断」の日であることから、安全を保証できないとガイドさんが判断したからだ。
 毎年7月20日が近づくと、南側では北側についてさまざまな情報が流れるという。それは決して、「いい知らせ」ばかりではない。その情報が正しいのかさえ、本当のところはよくわからない。現場の緊張した雰囲気に、紛争が残した現実と問題の大きさを感じずにはいられない。
 「インターナショナル・タバーン」は、トルコ系キプロス人のライアンさんが、29年間「ギリシャ側」で経営しているレストラン。現在、トルコ系・ギリシャ系のコミュニティの人々が交流する場となっている。
 「いまは、政策によって共存することが出来ない。が、私たちはいつかまた以前と同じように一緒に暮らせると信じている」と話してくれた。市民レベルの交流が平和への一歩、であることを感じさせられた。再会を喜び合うギリシャ系とトルコ系の人々…そんな彼らと一緒にディナー。
 トパーズ号の目の前では、統一に向けて活動する現地NGOとピースボート主催で、これまで犠牲となった人々への追悼セレモニーが。
 ピースボート側からはジョン・レノンの「イマジン」の合唱と、キプロス島にかかる虹を描いたパネルを贈った。平和を願う折り鶴でつくったこの虹をみて、現地NGOスタッフのニコスさんとライアンさんは、高々とパネルを掲げてみんなに見せた。「分断の日」とされているこの日にキプロスに入港し、彼らと一緒に平和を願う時間を共に過ごせたことは、私たちにとって大きな財産となった。
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