「コミュニティ・パワー」で自然エネルギーを活かせ! ~北欧、オーストラリアの地域エネルギー~

プロジェクト:脱原発 寄港地エリア:ヨーロッパ クルーズ: 第87回 地球一周の船旅
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「コミュニティ・パワー」で自然エネルギーを活かせ! ~北欧、オーストラリアの地域エネルギー~
ここでは、第87回ピースボートに乗船された水先案内人の中から、北欧やオーストラリアで、自然エネルギーを地域で広める活動をされている方々のお話を紹介します。

地域でつくる「コミュニティ・パワー」とは?

「コミュニティ・パワー」で自然エネルギーを活かせ! ~北欧、オーストラリアの地域エネルギー~タリン・レーンさん(左)とソーレン・ハーマンセンさん。船内で参加者の質問にたくさん答えていただいている様子。
第87回ピースボート地球一周の船旅では、北欧を航海中に3名の方から世界の「コミュニティ・パワー・ムーブメント」について学びました。「コミュニティ・パワー」という言葉はあまり聞き慣れませんが、これは自然エネルギーを広げる際に、国や大企業に従って進めるのではなく、地域が主体になることが大切だよというメッセージになります。

北欧をはじめとして、電気や熱、燃料といったエネルギーを「化石燃料から自然エネルギー」に転換している国々では、こうした小さな地域の人々が主役になった取り組みがきっかけとなって、社会を変えていきました。そうしたエネルギー事業は、主に地域住民の手によってまかなわれることが多く、それが雇用を生んだり地域のエネルギー価格を下げるといった恩恵を地域にもたらします。

自然エネルギーには、太陽光、風力、水力、バイオマス(木材や藁)など、様々な種類がありその地域によって活かせる資源は異なります。その地域資源のもたらす利益を、国や大企業に持って行かれてしまうのは損失です。それをもっと地域のために有効利用して行こうという決意が重要になります。

太陽光発電所や風力発電所を地域コミュニティで所有するというスタイルは、これまでに何十年もの歴史があります。デンマークは現在、風力だけで国の総電力消費量の40%をまかなっていますが、そのデンマークの風車の大多数は、こうした地域の人たちがお金を出し合ってつくったものです。

こうした動きは、カナダやオランダ、イギリス、アメリカなどでも盛んになってきています。そして福島第一原発の事故以降は、自然エネルギーの分野で遅れをとっていた日本でも、地域のエネルギーを地域で活かす「コミュニティ・パワー」を他国に学ぼうという流れが生まれています。エネルギーを身近なものにするこのような取り組みは、「ご当地電力」「ご当地エネルギー」などと呼ばれています。

100%自然エネルギーの島

「コミュニティ・パワー」で自然エネルギーを活かせ! ~北欧、オーストラリアの地域エネルギー~サムソ・エネルギー・アカデミー(デンマーク)のソーレン・ハーマンセンさん
コペンハーゲン港の近くには、青い海に映える真っ白な風車が見えます。このミドルグルンデン洋上風力発電所は、市民が関わってつくった風車として有名になっています。環境先進国として知られるデンマークでは、国としても自然エネルギーと省エネに力を入れています。1980年代半ばまで石油と石炭に依存していましたが、現在では日によっては100%以上の電力を風力発電でまかなうようなときもあります。その国の方針を決めた背景にも、地域の人々の声がありました。

水先案内人として乗船したソーレン・ハーマンセンさんは、自然エネルギーの研究を行うサムソ・エネルギー・アカデミー(Samso Energy Academy)の学長です。彼は、人口約4000人のサムソ島で10年の歳月をかけて、島の多くの住民と対話し、島のエネルギーの100%以上を自然エネルギーでまかなえるようにした立役者です。

島では、住民が風車やソーラーパネル、藁を利用したバイオマス暖房設備に投資できる仕組みをつくりました。この活動は2008年に雑誌「Times」でも紹介されるなど、さまざまな国際的なメディアが報道しています。

ハーマンセンさんは言います。「サムソ島は特別な所ではありません。私は、サムソ島のように自然エネルギー100%の社会を実現することは、どこでも可能だと考えています」。

「再エネ後進国・オーストラリア」で建てた市民風車

「コミュニティ・パワー」で自然エネルギーを活かせ! ~北欧、オーストラリアの地域エネルギー~ヘップバーン・ウィンド(オーストラリア)のタリン・レーンさん
サムソ島の取り組みは、世界各地に影響を与えました。その1つが、オーストラリアから乗船した水先案内人のタリン・レーンさんが所属する、ヘップバーン風力協同組合(Hepburn Wind)です。オーストラリアは石油やウランなど、化石燃料の大生産地で、政府は自然エネルギーへの切り替えには消極的です。しかし彼女たちはそんな国で、市民がオーナーシップを握る「市民風車」を建設しました。

オーストラリア初の市民風力発電所であるヘップバーン風力発電所は、ビクトリア州のレオナーズヒルにあり、近隣の2つの街、約2300世帯分の電力を供給しています。始まりは、大企業がこの地域に2基の風車の建設計画を持って来たことでした。しかし、その計画では、地域住民へのメリットはなく、売電収益のほとんどは企業に持って行かれることになっていました。

地域住民は計画に単に反対するのではなく、自分たちが主体となって、市民を風車を建てるという選択肢を選びました。プロジェクトには多数のボランティアが関わり、地域の人々が投資することで1300万ドルの立ち上げ資金が集まりました。レーンさんは言います。「900万ドルは、地域住民の出資金でした。リーマンショック後の世界金融危機で資金集めに苦労しましたが、風車の建設許可を得ることはさらに大きく複雑な課題でした」。

さまざまな困難を乗り越えて2011年6月に、地域の人々のための風力発電所は送電を開始しました。数年がかりで多くの人の協力の元に実現した計画に、レーンさんは自信を深めたと言います。「オープニングセレモニーには、私たちのビジョンに投資した1800人以上を招待しました。小さい成果かもしれませんが、もし同じ取り組みが100個行われたら、変化が生まれるはずです」。

他の地域でも広がる自然エネルギー

「コミュニティ・パワー」で自然エネルギーを活かせ! ~北欧、オーストラリアの地域エネルギー~船内で通訳ボランティアや参加者と楽しく話し合うタリン・レーンさん
レーンさんは、地域主体の自然エネルギー事業を支援・促進するエンバーク(Embark)というNPOにも携わっています。市民風車の取り組みの経験を活かして、にオーストラリアの他の地域の人々もサポートして、広げていこうとしているのです。エンバークには、2010年の開始以来、自然エネルギー事業に強い関心を持つ45以上の地域からコンタクトがありました。

レーンさんは言います。「ヘップバーン風力協同組合は、地域主体で自然エネルギー事業を行うことが実現可能だということを証明しました。これから、後に続く人を増やし、行政に向けてこのやり方がうまくいくということを見せていく必要があります」。

船内でレーンさんは、ハーマンセンさんと共に世界のコミュニティ・パワー・ムーブメントについて講演を行った他、東ティモールをはじめとした世界各地の紛争後のコミュニティ開発に関わった経験談や、ご当地エネルギーと地域の組織化についてのワークショッなども行いました。

地熱発電でエネルギーをまかなうアイスランド

「コミュニティ・パワー」で自然エネルギーを活かせ! ~北欧、オーストラリアの地域エネルギー~アイスランドの作家、アンドリ・マグナソンさん
アイスランドもまた、独自のエネルギー政策を持つ国です。水先案内人のアンドリ・マグナソンさんは、数々の文学賞を受賞しているアイスランドの作家で、自然保護活動家でもあります。「アイスランドは手つかずの大自然が残り、100%の電力を地熱発電など自然エネルギーでまかなっています。一方で、深刻な環境破壊も起こしています」と語り、自らが環境保護運動をするようになったきっかけについてなどを話しました。

マグナソンさんは、環境問題と経済の関係を著書『よみがえれ!夢の国アイスランド』(英題:Dreamland)で訴えました。人間と自然の平和的共生というメッセージは、多くの人の心に響きました。アイスランドで利用されている地熱発電の技術は、主に日本から来ています。地熱資源が豊富な日本でその技術を活かせば、原発20基相当の電力を地熱で発電できるとも言われています。

エネルギー問題は、今日の日本で最も注目されている問題のひとつですが、そのカギを握っているのがゲストの3人が取り上げた地域資源である自然エネルギーを、地域の利益になるように活かすということです。日本ではまだまだ、地域の取り組みは少数ですが、コミュニティ・パワーを盛り上げることが、エネルギー問題だけではなく、地域の衰退を止める解決策にもなるはずです。
※当記事は、英語のリポートに基づいて編集されたものです。記事原文は以下リンクからご覧ください。

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