国際交流を通じて平和を!世界からYMCAの若者を乗せて出航

国際交流を通じて平和を!世界からYMCAの若者を乗せて出航
8月21日(金)、第88回ピースボート地球一周の船旅が横浜港から出港。20カ国25の寄港地をめぐる108日間の旅がはじまりました。

世界YMCAの若手リーダー60カ国150名が乗船

国際交流を通じて平和を!世界からYMCAの若者を乗せて出航
戦後70周年に出航するこの船旅では、横浜からシンガポールの区間で世界YMCAとの共同プロジェクトを実施します。その区間は、60カ国から150名もの若手リーダー育成プログラム(Change Agents Program)の参加者が集います。そして洋上では、ピースボートの参加者も交えた平和構築などについての意見交換も行う予定です。

また、今年は大きな歴史の節目である戦後70周年です。奇しくも日本国内では、安保法制が非常に大きな問題になっています。日本YMCAは安保法制に対する緊急声明を挙げています。またピースボートもともに船旅を企画している韓国のNGO環境財団とともに声明を出しました。そしてこのクルーズでは、その安保法制で注目されているホルムズ海峡を、約1000人の日本人参加者を乗せて通過します。この問題の現場を、日本の市民がその目で見て、どんなところに若者たちを送ろうとしているのかについて考えることは意義のある体験になるはずです。

出航当日は、YMCAとの共同プロジェクトについて、そして安保法制をめぐる問題点について記者会見を実施しました。ここでは、その内容を報告します。

人生を変えるような体験を、若者たちと共有したい

国際交流を通じて平和を!世界からYMCAの若者を乗せて出航
ヨハン・エルトヴィック牧師(世界YMCA同盟事務局長)

今回、ピースボートとの共同プロジェクトを発表できる事をとても嬉しく思っています。YMCAという組織は、171年間平和のために取り組んできた歴史の長いNGOです。1946年にはノーベル平和賞も受賞しています。今回のプログラムは世界中の若者を集めて、地球市民を育成する新しい取り組みです。このプログラムを実施するに際して、世界中を船で回っているピースボートが、素晴らしいパートナーとなってくれました。10日間の間に、世界中の若者たちとピースボート参加者の皆さんとともに密度の濃い時間を過ごせる事を楽しみにしています。

個人的な事になりますが、私は今年の3月に初めてピースボートに乗船しました。そのとき広島の被爆者の方と出会ったことは、私にとって人生を変えるほど強い体験となりました。そのような世界のさまざまな現実を、今回乗船した若者たちとも共有したいと思っています。

軍事力に頼った外交はやめるべき

国際交流を通じて平和を!世界からYMCAの若者を乗せて出航
島田茂さん(日本YMCA総主事)

ピースボートは1980年代から若者たちを乗せて世界をめぐっています。その旅を通じてステレオタイプを乗り越え、若者たちが変わって来るという活動をされてきました。今回、世界119カ国で活動しているYMCAがピースボートと手を組んで平和をつくり出すということは本当に大きな力になると感じています。

今起きている安保法制の問題は、まさに日本が大きな岐路に立っていることを示しています。日本の戦後70年は戦争の反省にたって、二度と戦争をしない、そして戦争への加担もしないという事を憲法で決めてきました。その憲法の下で、私たちはアジア太平洋地域で国際協力事業を行い、責任をつぐなってきた歴史があります。日本YMCAとしても戦後は多くの国際協力を実施しました。

しかし安保法制が示すような形でアメリカの戦争に加担する事になれば、立場が変わりテロの対象になる可能性も出てきます。私たちは若者が世界に旅立ち、相互理解をして、平和をつくり出す活動を深めていきたいと考えています。「積極的平和」というのは軍事力に依存する今の安保法制のような選択肢を選ぶのではなく、軍事力によらない平和構築を積極的にやっていくべきだと強く求めています。

地域の住民に必要なのは武力ではない

国際交流を通じて平和を!世界からYMCAの若者を乗せて出航
井筒高雄さん(元自衛隊レンジャー隊員、元兵庫県加古川市議)

私は、元自衛隊の普通科連隊という所でレンジャー隊員をしていました。また元政治家でもあります。その経験から軍事と政治の立場から今の安保法制に対して反対意見を述べたいと思います。今の政治家の方たちの議論を聞いていると、あまりに軍事のリアリティとか自衛隊の実情を無視して進められているなと感じるからです。まず根本的に問題なのは、安倍政権が立憲主義にあるまじき政治手法で進めているという点です。戦後70年間、国際公約してきたことをないがしろにしているので、絶対に認める事ができません。

もう一点は、今回の安保法制で議論になっているホルムズ海峡についてです。ペルシア湾に自衛隊を本当に派遣して機雷除去をすると言っていますが、それがどういうことなのか、ということをしっかりと認識している人がいないのではないかと思うのです。自衛隊員がペルシャ湾で機雷除去などの軍事活動を行うということは、万が一それを仕掛けた国がまだ交戦をしていないとしても、日本が先制攻撃を仕掛けたというふうに判断されるのが軍事の世界での常識です。でも戦争当事国になるというリスクを、総理を含めて政治家の方たちはお持ちではない。そういうリスクを明確にしないまま、ただ「安全なんだ」、「リスクは上がらないんだ」と詭弁をふるって国際社会や国民を騙し、日本のあり方を変えようというのは断じて受け入れるべきではありません。

最後に、どんな枠組みであれ 軍隊が派遣された現場で一番危険な状況に追い込まれるのは、常にその地域の一般住民です。彼らは反政府軍から危険にさらされ、外からやってきた国連軍や外国軍との間で板挟みになります。本当に紛争の中で苦しんでいる住民を保護するのであれば、武力を使ったアプローチではなく、丸腰で行って、武力を放棄するように呼びかけるような態度でやるべきです。

「積極的平和主義」というのは、ピースボートがやっているような普通の人たちが取り組むことのできる草の根の平和活動のことを言います。そういう地域の人たちに寄り添って進めるような活動を外交の基礎に据えるべきであって、無駄に人を殺したり殺されたりするリスクを冒すことではありません。

平和志向だからこそできることがある

国際交流を通じて平和を!世界からYMCAの若者を乗せて出航
川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表/ピースボート共同代表)

ピースボートはこれまで32年間、武力で平和はつくれないことを訴えて、広島や長崎の被爆者の方とともに世界中で証言を広めてきました。今回のクルーズでは、ホルムズ海峡を通ってペルシャ湾に入るわけですが、日本での議論を聞いて感じる事と、現場を訪れて感じる事は全く違うと思います。今回は多くの日本の方がその現実を体験することで、日本が軍事力ではなく民間や非軍事での平和貢献をするという大切さを身を以て感じられるのではないかと思います。

ピースボートのような非軍事の国際貢献活動ができてきた背景には、日本がこれまで曲がりなりにも平和志向で中立的だという認識を世界にされてきたという事実があるからです。だからこそ広島・長崎の人たちが世界で証言する際にも、アメリカに恨みを述べているわけではないということを感じていただけるのです。また、イスラエルとパレスチナなどの紛争当事国の人々が、ピースボートの船の上で安心して対話が出来るのも、そのような日本の姿勢というものが反映されてきました。今回の船旅でも、日中韓の学生が共に学ぶ地球大学特別プログラムや、イランの若者たちが乗船するプログラムを予定しています。そのようなことができるのは、日本が比較的平和志向で中立の国だったからなのであって、今回の安倍政権のような事を進めると、世界から見た日本の見え方が大きく変わってくるのだ、ということを注意喚起しておきたいと思います。

※ピースボートは2015年より世界YMCA同盟と正式に提携し、国際交流プログラムを洋上などで実施することにしています。

※YMCAとは  YMCAは、1844年にロンドンで誕生しました。産業革命が進む中、同世代の仲間たちの人格の成長と生活の改善を願う12人の青年たちの「志の結集」がその始まりでした。彼らの行動が多くの若者たちの共感を呼び、国境を越えて、今日のYMCA運動に発展しています。現在、日本を含む世界119の国と地域でおよそ5800万人の会員がYMCAの活動にかかわっています。

※世界YMCA同盟とは  世界YMCA同盟は連盟組織です。国家を単位として加盟することを原則としていますが、1カ国から2つ以上のYMCAが加盟しているケースもあります。119の国と地域にYMCAがあり、営利を目的としない民間非営利組織(NPO)であり、政府にも依存しないで活動する非政府組織(NGO)でもあります。1855年に赤十字社を創設したスイス出身のアンリ・デュナンの呼びかけによって、フランス・パリで最初の世界YMCA大会が開かれました。その大会で世界のYMCAの共通の使命であり、運動の基盤を示した「パリ基準」が制定され、世YMCA同盟が結成されました。

インフォメーション

ピースボートの船旅
VOYAGES
いちばん大事なこと
枝廣 淳子
環境ジャーナリスト / 翻訳家
もっと見る
枝廣 淳子