コミュニティを大切にするハワイイの災害対策–ホノルル

プロジェクト:災害救援と防災 寄港地エリア:太平洋 クルーズ: 第84回 地球一周の船旅
コミュニティを大切にするハワイイの災害対策–ホノルルハワイ州市民防衛組織のダグ・メインさんが、島の危機対応システムについて説明してくれました。
第84回ピースボートで訪れたハワイイ(※)のホノルルで7月20日に行われた交流プログラムの報告をお届けします。
※一般にはハワイと表記されていますが、ピースボートではこの島の先住民族がもともと呼んでいた発音に近い「ハワイイ」と表記するようにしています。
コミュニティを大切にするハワイイの災害対策–ホノルルオアフ島北部ノースショアのビーチを訪れ、実践されている防災措置を見学しました。
常夏の楽園というイメージで語られているハワイイですが、地震や津波、ハリケーンなどの自然災害と隣り合わせにあるという点では日本と同じ状況です。今回の交流プログラム「ハワイイに学ぶ、災害に強い社会と持続可能な暮らし」では、ピースボートの約20名の参加者がハワイイ農村部の暮らしを体験し、そこでの防災の取り組みについて学びました。

NGOピースボートは、阪神淡路大震災(1995年)以来、国内外の自然災害被災地への支援活動や防災減災への取り組みを行っています。最近では、国連国際防災戦略事務所(UNISDR)が推し進める災害に強い都市づくりに向けた国際キャンペーンの公式パートナーとして、コミュニティや地方自治体単位での災害対策の促進に力をいれています。この活動の一環として実施されたのが、今回のハワイイでのプログラムです。


コミュニティを大切にするハワイイの災害対策–ホノルルカラニさんとコミュニティの仲間がハワイイの歌を歌ってくれました。
「ハリケーンがいつ来てもおかしくないし、来るときには大きな被害が出ると予想されています」と話してくれたのはカラニ・ソウザさんです。国土安全保障と災害管理についての教育や訓練を提供する国家機関であるNDPTC(※国家防災トレーニングセンター)でコミュニティ広報を担当しているカラニさんは、現在、ハワイイだけでなく米国本土も対象に活動しています。都市部も手がけていますが、カラニさん自身の関心は「もっとも蓄えが少なく、もっとも助けを必要とする場所」である農村部や先住民コミュニティ地域にあるといいます。
※NDPTCは、National Disaster Preparedness Training Centerの略称

カラニさんは、ホノルル市内にあるNDPTCの事務所だけでなく、農村部の防災の実践現場まで参加者を案内してくれました。ちょうど大きな嵐があった翌日だったため、参加者は、鉄砲水と小規模の土砂崩れの現場を目の当たりにしました。


コミュニティを大切にするハワイイの災害対策–ホノルルピースボートからの参加者はNDPTCのこれまでの取り組みについて学びました。
災害対策というのは専門家に任されてきた分野でしたが、災害発生時には道路が塞がるなどの理由から、その対策も有効に機能しないという調査結果が明らかになりました。また政府による災害支援は、人口の大多数と観光基盤が集中している都市部が優先されがちです。犠牲者数は災害発生から36時間以内が最も多いとされていますが、離れた農村部まで支援が届くには、36時間どころか長い場合は7日から8日もかかることがあります。
つまり、最初に助けてくれるのは救急車や消防車よりも、近所の人々である確率が高いのです。カラニさんが関わるコミュニティは、外部からの支援がなくても1週間は生き延びられるだけの準備をしています。そんな現状を踏まえて、「国や州の政府から力を移しそれぞれのコミュニティに資金とリソースと訓練を提供しておけば、災害発生直後に対応ができて、犠牲者数を減らせるのではないでしょうか」とカラニさんは考えています。

また、自然災害への危機感や恐怖感よりも、コミュニティの結束を促すことの方が、緊急時への備えとして効果があるとNDPTCは結論づけています。そこで、コミュニティが災害に備えるための新たな方法を模索しました。「政府が実施する研修よりも、パーティなら足を運ぶという人はコミュニティの中にたくさんいます。そのためパーティを開催し、緊急時における食料や医療品の重要性などについて話します。大きな災害に対する恐怖を植えつけるのではなく、お年寄りや子どもたちが守られるようにしたいという気持ちを伝えます。日々の生活に根ざした取り組みの方が、大きな恐怖をあおるよりもはるかに効果的なのです」。
コミュニティを大切にするハワイイの災害対策–ホノルル参加者は、ハウウラで災害対策に育てられている可食植物の味見をしました。
防災対策のすべての面にコミュニティを巻き込むことで、より効果的になります。カラニさんは言います。「たとえば、コミュニティ全体のための避難経路を検討するとき、州政府の人間より、その都市に住む多くの人々から意見を聞くことで、より効率的なルートを見つけられるはずです。一番短い避難経路は、門限ぎりぎりに家に帰ろうとする高校生が知っている可能性が高いですからね」。

NDPTCの取り組みや方法論を聞いたあと、グループは、オアフ島のホノルルの反対側の海岸沿いであるハウウラというコミュニティの実践の様子を見学しました。このコミュニティは、5年前の調査のとき自然災害が起きた場合に非常に危険だと判定されました。これまでも外部につながる唯一の道が、津波やハリケーン、洪水や地震などで何度も通行不可能となり孤立してきたのです。これをうけて、NDPTCが災害対策について研修を実施し、コミュニティで独自の対策が打ち出されました。今ではハウウラには緊急時の水と医療品が常備され、2週間程度分の食糧となる果物を育てています。この取り組みは、災害に強いコミュニティとして米国政府から2つの賞を受けており、またハワイイ州で最も災害に強い地域と認められるようになりました。
コミュニティを大切にするハワイイの災害対策–ホノルル参加者はハワイイの伝統的な歌を習いました。
国連がすすめる災害に強い町づくりをすすめる国際キャンペーンにおいて、コミュニティや利害関係者の参加と能力向上は欠かせない要素です。これはピースボート災害ボランティアセンター(PBV)の活動にも共通する理念で、市民が学び携わることが災害時の人・経済・環境への被害を最小限に抑えます。このプログラムに同行したPBV国際コーディネーターのロビン・ルイスは「災害に強くあるためには人と人との関係がものをいいます。東日本大震災の時も、米国を含む国際社会の反応は胸に響くものでした。今回の交流をきっかけにハワイイのコミュニティと協力し、お互いより災害に強くなっていけることでしょう」と展望を語ります。

現地で穫れたパパイヤ、トマトやタロイモなどを使ったおいしい昼食を頂いたあと、ハウウラの住民から防災計画がコミュニティに与えた良い影響の話を伺いました。この地域では、コミュニティの意識や結束が高まり、食料自給率も上がり、また持続可能性も向上したという連鎖反応があったということでした。カラニさんは、「僻地のコミュニティこそ、対話に参加していることや災害対策に参加していることが大切なのです」と伝えてくれました。ハワイイにはこんな諺があるそうです「誰かがやるのではなく、全員がやるのだ」と。

※当記事は、英語のリポートに基づいて編集されたものです

インフォメーション

ピースボートの活動
PROJECTS