祈るだけでなく、ともに行動を!/サーロー節子さん記者会見

プロジェクト:核廃絶
祈るだけでなく、ともに行動を!/サーロー節子さん記者会見サーロー節子さん
広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんが来日し、12月6日、ピースボートセンターとうきょうで記者会見を行いました。長年核廃絶の活動に取り組んできたサーローさんは、2008年には第1回おりづるプロジェクトの参加被爆者として、また、それ以前にも何度か水先案内人としてピースボートに乗船されています。2017年12月にICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞したときには、授賞式でICANを代表して講演しました。
祈るだけでなく、ともに行動を!/サーロー節子さん記者会見東京の国際文化会館での講演会(12月4日)
今回は母校である広島女学院大学の招きで11月から来日されました。東京では、政府高官や与党幹部などと会談し、核兵器禁止条約に日本の参加を求める働きかけをしてきました。なお、これらの働きかけにはICANの国際運営委員であるピースボートの川崎哲が同行しています。ここでは、記者会見の内容を抜粋してお伝えします。

被爆者として許せない政府高官の発言

祈るだけでなく、ともに行動を!/サーロー節子さん記者会見岸田文雄氏と会談するサーロー節子さん、川崎哲(12月5日)
Q:この2日間、政府高官や与党幹部とお話した感想を聞かせてください。

それほど特別な思いを感じたわけではありませんが、みなさん親切に対応してくれました。特に岸田文雄さん(自民党政調会長)との話は良い印象を受けました。

もっと政府の立場を言い訳するのかと思っていましたが、「与党はなぜこう言っているかという説明」や、「あなたたち(サーローさんや被爆者たち)の言っていることには道理がある」とか、「新しいアイディアがあれば聞かせてください」と言われました。異なる意見には耳を貸さないという態度ではありませんでした。

西村康稔さん(内閣官房副長官)との会話では、ひっかかる発言がありました。それは「政府は市民を守る責任があるから、核兵器を禁止できない」という内容です。

私は反論しました。日本はアメリカの核抑止政策に追従しています。私は73年前、子どもも大人も無差別に焼かれてしまう皆殺しを目撃しています。いまはもっと核兵器の性能が上がっているので、何十万人ではなく何百万人かもしれませんが、それほどの人間を皆殺しにする用意がある、というのが核抑止論です。日本はそれを自国の政策とする態度をとっています。私には、そのような意味の言葉に聞こえました。

被爆者としては、それは絶対に許せない発言です。人間は核兵器と共存できません。「そういった非人間的な政策は受け入れることができません」、とお話しました。日本政府の重要な立場にいる政府高官の方が、そういう事も考えずにぺらぺらぺらと軽い感じで「市民を守るためには核抑止が必要」とおっしゃることに唖然としました。

官僚の方たちも丁寧に対応してくれましたが、あの人たちは、決められたことをオウム返しに繰り返し話すだけでした。独創的で新鮮な言葉は何も聞くことができませんでした。

見せかけの橋渡し

祈るだけでなく、ともに行動を!/サーロー節子さん記者会見12月6日、西村康稔内閣官房副長官に安倍首相宛の手紙を手渡す(首相官邸にて)
Q:日本政府(安倍首相や河野外務大臣宛)に渡したサーローさんの手紙の文面に、「見せかけの橋渡しではなく」とありますが、どのような意味でしょうか?

日本政府は「核保有国と非核保有国の間の橋渡しをする」と言っています。でも橋渡しは、両者を熟知していないとできません。去年7月7日に国連で核兵器禁止条約の交渉が始まる採択される前日ときに、日本政府の高見澤沢軍縮大使はが国連で「日本政府としてはこの条約の交渉に参加しないと決めました」とおっしゃいました。交渉に参加しないという決断は、話し合いの内容を知る必要がないと判断したということです。でもICANや核兵器禁止条約に賛同した122カ国が考えていることを理解できなければ、橋渡しなんてできません。日本政府の主張は一貫性がないのではないでしょうか?「それが「見せかけの橋渡し」という言葉の意味です。

核廃絶への一歩は

祈るだけでなく、ともに行動を!/サーロー節子さん記者会見
Q:核廃絶への機運が高まってきている一方で、どういうプロセスで核廃絶ができるのかという具体的話がイメージができないという方も多いようです。核廃絶へのファースト・ステップは何か、サーローさんはどうお考えでしょうか?

最も優先すべきことは、早く核兵器禁止条約に50か国の政府が批准して発効させることです。70年以上もかけてようやくここまできました。ぜひとも条約が発効されるよう、50か国が署名して批准してもらわなければなりません。

現在は19カ国です。ひとつでも多くの国に参加して欲しいと思っています。日本政府の要人にお願いしたことは、日本がその50カ国の一国になって欲しいということです。

また、日本の皆さん一人一人にお願いしたいのは、この運動に加わって一人一人が政府に働きかけてくれることです。日本はいま、禁止条約にそっぽを向いて協力しないという態度をとっています。

被爆者たちは、核兵器が広島と長崎の市民にどんな被害をもたらしたか、70年以上かけて訴え続けてきました。それだけ、日本は世界のどの国よりも核兵器の被害を一番理解しているはずです。それなのに政府が横を向いているというのは、道徳的にどういうことなのでしょうか?電話であれ、メールであれ、いろんな形で政府にプレッシャーをかけてもらえたらと思います。

遠くから祈るのではなく行動を!

祈るだけでなく、ともに行動を!/サーロー節子さん記者会見
Q:核兵器の問題について、若い世代へどう引継ぐかが大切になってきています。子どもたちや若い世代へのメッセージをお願いします。

先週、私の母校である広島女学院に行きました。中学、高校、大学の学生さんたちとお話をしました。また広島の三次好という地域にある高校にも行きました。以前、その高校の先生から手紙が送られてきたからです。先生は、生徒たちにこのような課題を出しました。

私のノーベル平和賞授賞式で行ったスピーチをよく聞いて、感想を日本語と英語で書くというものでした。そして100通にわたる手紙を、カナダにいる私に送ってくださいました。私は一枚一枚、注意深く読みました。生徒たちの正直な思いに胸を打たれて、もうハンカチなしには読めない内容でした。だから次に日本を訪れるときには、ぜひこの学校に行って、手紙を出した生徒さんたちにお礼を言いたかったのです。

今回日本に来て最も嬉しかったのは、そういう若い人たちと会ったことです。本当に報われた感じがしました。今の日本の若い世代は、核兵器や戦争のことを考えていない人が多いと言われています。でも、私がお会いした若い人たちは、私の話を真摯に受け止めて、乾いたスポンジのように耳を傾けてくれました。

もちろんすべての若者がこうであるとは言えませんが、広島の若者たちとの出会いは私を勇気づけてくれました。これからカナダに帰りますが、できればこのようなよく学んでいる若い人たちと、カナダの学生たちが交流できるような場をつくりたいと思いました。

東京でもこういう若い人たちがいるんでしょうね。大人の皆さんは、そういう若者たちをサポートしてください。アイデアをあげてください。そして学ぶだけではなく、学びを行動に移そうと言ってください。

広島ではあちこちで歓迎してもらいました。そして「お体にお気をつけて、これからも頑張ってくださいね」「遠くから祈っていますよ」とか、いろいろ言ってもらいました。でも、ちょっと悪いかなと思ったんですけど言ったんです。「ただ祈ってくれるだけじゃなくて、一緒に頑張りましょうよ」と。「祈ってますから頑張ってね」という態度では十分ではありません。同じようなことをみなさんにもお伝えします。一緒にがんばりましょう!

※安倍晋三首相に送った手紙の内容は、以下の添付ファイルからご覧になることができます。

安倍晋三首相へサーローさんが渡した手紙(PDF)

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