アジア11カ国36名で考えた「平和で包摂的な社会」 ~2017年・地球大学特別プログラム報告~

プロジェクト:地球大学 クルーズ: 第95回 地球一周の船旅
アジア11カ国36名で考えた「平和で包摂的な社会」 ~2017年・地球大学特別プログラム報告~
2017年8月10日(木)から8月28日(月)にかけての19日間、ピースボートは4年目5回目となる地球大学特別プログラムを開講しました。今年のプログラムは、国連の定めた持続可能な開発目標(SDGs)の16番目の目標に合わせて「平和で包摂的な社会をつくる」をメインテーマに掲げました。東京外国語大学、韓国・慶熙大学校、東京大学、インド・ジャワハルラール・ネルー大学などから集まった11カ国・36名が、第95回ピースボート「地球一周の船旅」のアジア区間(横浜~厦門~シンガポール~ヤンゴン)に乗船し、誰一人取り残さない社会の実現について学び、考えました。

アジア4都市ですぐそばにある社会問題のリアルに踏み込んだ。

アジア11カ国36名で考えた「平和で包摂的な社会」 ~2017年・地球大学特別プログラム報告~中国・厦門でのマングローブ植林体験の様子
今回のプログラムでは、東京、厦門(中国)、シンガポール、ヤンゴン(ミャンマー[ビルマ])の4都市を訪れました。

東京では、日雇い労働者の街から福祉の街へと時代とともに変化してきた山谷を訪れ、また、池袋でホームレス状態の人たちへの炊き出しの手伝いをしました。新宿の夜回りに参加し、路上で生活をする人たちに医療相談のチラシ配りも行いました。きらびやかな繁華街や高層オフィス街のすぐそばにある都会の闇を知り、普段から東京で暮らす学生は「今まで何度もきたことがある場所なのにちっとも気が付かなかった」と言い、韓国の学生は「ソウルにもきっとこのような闇があるのだと思う」と、自分の街にも経済成長が取り残してきた人たちがいるのではないかと考えていました。

厦門では、現地のNGOの協力のもと地元の小学生を対象とした環境教育を行いました。大気汚染や森林破壊がいかに深刻であるかについて、言葉があまり通じない小学生にどのように伝えればいいのか、学生は試行錯誤をしながら果敢に児童と向き合いました。急速に破壊が進むマングローブ林の保全のための植樹にも取り組みました。想像を絶する暑さの中でのこの活動では、自然を失うことはいとも簡単なのに取り戻すのはこんなにも大変なのかと痛感せずにはいられませんでした。

シンガポールでは出稼ぎ労働者の生活・労働環境について支援団体に聞きました。出稼ぎ労働者が集う地区では、地元の住民に「迷惑がかからないように」と、労働者の移動や行動を制限するような看板が多く目につきました。また、当事者の話からは、怪我を負った時にはすぐに見捨てられてしまうといった厳しい状況を知ることができました。「多民族共生」と言われるシンガポールですが、もしかしたらこの「共生」に含まれる人と含まれない人がいるのかもしれないという事実に、多くの学生が深く考え込んでいました。

最後に訪れたヤンゴンでは複数のユース団体との交流を行いました。ヤンゴンは軍事政権が崩壊したあともまだまだ社会が安定しません。そのような中にあって、同年代の現地の若者は、民主化や人権、宗教間の摩擦などの難しい問題に対して、対話の場を設けたりアドボカシー活動を行ったりするなど、具体的なアクションを通して活発に取り組んでいました。社会は自分たちが主体となって変えていくという現地の若者の姿にはパワーをもらい、学生らにとっては自分たちのコミュニティでは何ができるのかを考えるきっかけにもなりました。

自分が当事者だったら?ジャーナリストだったら?政治家だったら?…各界の専門家と共にとことん議論した洋上ゼミ。

アジア11カ国36名で考えた「平和で包摂的な社会」 ~2017年・地球大学特別プログラム報告~毎日の洋上ゼミでは、グループワークを多く取り入れた
各訪問地での体験をもとに、洋上ゼミではナビゲーターとして参加していただいた忍足謙朗さん(国連食糧計画[WFP]元アジア地域局長)、キン・オーンマーさん(民主化・人権運動家)、リー・クワン・ブーンさん(シンガポール国連協会副会長)とともに、浮かび上がった課題について議論を深めました。自分がホームレスだったら?ジャーナリストだったら?行政の担当者だったら?…ディスカッションやロールプレイでは複数の視点から課題を見つめ直しました。

各学生によるプレゼンテーションの機会も多数設けました。東京でみたような「経済成長の闇」は韓国や中国などでもみられるのか、シンガポールで学んだ移民問題についてインドやフィリピンはどのように取り組んでいるのかなど、議論を進めていくと、地域に共通する問題や課題も見えてきました。各事例の特異性に気を付けながらも、他の国や社会から学べることはないか、国をこえて取り組めることはないかといった視点からの意見が多く出されました。

アクションを起こしてみたら、多くの人が関心を持ってくれた。行動するって思ったよりも難しいことではなかった。

アジア11カ国36名で考えた「平和で包摂的な社会」 ~2017年・地球大学特別プログラム報告~船内で募金を呼びかける参加者
船内での「アクションチャレンジ」では、SDGsを広めていくために学生が自分たちで考えた「アクション」を次々と実践しました。SDGsを覚えやすくするための歌とダンスを披露したり、持続可能な社会のために何ができるかを乗船客に書いてもらい写真を撮ったり、多文化共生をテーマにした写真展を行ったりと、様々なアクションが展開されました。厦門でお世話になった環境保全団体への募金活動や、ジェンダーに関する啓蒙ワークショップなども行いました。

「何か行動を起こすということは、もっともっとハードルが高いことだと思っていた。でも、勇気を出してやってみたら、思ったよりもずっと多くの人が関わってくれた。」との学生の感想には、手ごたえがにじみ出ています。また、船内でのアクションチャレンジで自信をつけた学生の一部は、プログラム終了後に自分たちの大学でも募金活動に取り組んだとのこと。アクションがまた次のアクションへとつながっています。

アジアの未来をともに考える「家族のような同志」、そしてそれを支えるプラットフォームづくり。

アジア11カ国36名で考えた「平和で包摂的な社会」 ~2017年・地球大学特別プログラム報告~最後の寄港地ヤンゴンで訪問した団体のメンバーとの一枚
今年の地球大学特別プログラムには、韓国、日本、インド、台湾、中国、香港、フィリピン、ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、ミャンマー、シンガポールの11カ国から学生の参加がありました。19日間寝食をともにすごした36名は家族のように仲良くなり、今後のアジアの未来を担う同志としての結束を強めたようです。プログラム後には早速お互いの国を訪問するなどの動きもあったようで、今後も国境をこえた若者のコラボレーションに期待できそうです。

今回はこれまでに比べて参加者が倍以上にもなりました。この背景には、大学を通した参加の増加があります。今年は東京外国語大学、韓国・慶熙大学校、東京大学、インド・ジャワハルラール・ネルー大学それぞれから複数名の参加がありました。また、ブルネイプロジェクトと台湾・龍應台財団が本プログラムの趣旨に賛同して学生をスポンサーしてくれるなどの新たな広がりもありました。本プログラムを軸に、アジアの人材育成のプラットフォームも徐々に広げていけたらと思っています。

報告書はこちら

くわしくは報告書(英語・日本語簡易版)を下記よりダウンロードしてご覧ください。

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