世界を変えるには、まずは自分から ― 2016年冬期 地球大学報告 

プロジェクト:地球大学 クルーズ: 第93回 地球一周の船旅
世界を変えるには、まずは自分から ― 2016年冬期 地球大学報告 
2016年12月9日~2017年3月23日、第93回ピースボート地球一周の船旅で地球大学プログラムを実施し、18~29歳の27名の若者が参加しました。104日間の航海を通して「持続可能な社会をつくる」をテーマに、多文化共生や多様性理解、差別や偏見、貧困の現状など、計45回のゼミを通して様々な角度から学びを深めました。

日本から遠く離れたアフリカや南米、南太平洋の人や文化・世界の歴史や現状と出会い、国連の掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」と関連づけた学びのプログラムを通して、「世界を変えるには、まずは自分から」という大きな気づきを、多くの参加者が実感しました。

【アジア区間】多様な船内で異文化を体感

世界を変えるには、まずは自分から ― 2016年冬期 地球大学報告 莫邦富さんとのゼミのようす。中国と日本に関して、素朴な疑問に答えてくださいました。
「訪れる国のことを事前に学んだ上で、現地に行って体感したい」
「船旅を通して、自分を変えたい」
「自分の意見を伝える力を身につけたい」
―地球大学に参加を決めた理由は様々。年齢・出身・学歴や職歴も異なる参加者が集まる地球大学では、ディスカッションやワークショップなどを通して、学び合う場を大切にしています。

日本を出発したばかりのアジア区間は、学びの土台づくりからスタート。世界中から集った語学講師たちとの異文化理解ワークショップや、日本初のフードバンクを設立したチャールズ・マクジルトンさんによるコミュニケーションワーク、ビジョンを可視化するワークを経ながら、健全で平和なコミュニティーにおける持続可能性について考えていきました。

そして、中国・シンガポール・台湾・韓国などアジアの国々から約60名の乗客がピースボートに合流。船内では様々な言語が飛び交います。中国出身のジャーナリスト・莫邦富さんらを招いてのディスカッションでは「なぜ中国では LINEなどのSNSが使えないの?」という素朴な疑問から、日本と中国の生活の比較や歴史認識まで発展して考えました。実際に現地を訪れ、そこに住む人々と過ごすからこそ、アジアの中での日本の立ち位置が少し広い視点から見えてきました。

【アフリカ区間】自分たちの中にある偏見に気づく

世界を変えるには、まずは自分から ― 2016年冬期 地球大学報告 加藤直邦さんとのワークショップのようす。動物の立場を体験できるゲームで、生物多様性を体感しました。
多民族が共存するシンガポールを経て、船はアフリカ大陸へ。この区間ではまず、プロサファリガイドとして活躍する加藤直邦さんを迎えて、ゲームを通して生物多様性や自然との関わりを体感しました。

また、20世紀最悪の政策と言われた、人種隔離政策「アパルトヘイト」の歴史と今を、南アフリカ出身・在住の活動家であるノンディエボ・シャバララさんとともに考えながら、人権、ステレオタイプ、差別といったテーマを掘り下げました。

「知らず知らずのうちに、自分の物差しで判断してしまっていた」
「ステレオタイプは小さなものでも、積み重なることで日常的・社会的に大きな問題に繋がってしまう」…ある時は空気のような存在であるステレオタイプが、いつしか差別に繋がってしまうと感じた受講生。身近に起こっている社会的な差別や人権問題の実例として、セクシャルマイノリティーや沖縄の米軍基地問題、被差別部落の歴史などを、どうすれば乗り越えていけるのかという疑問が生まれました。

多様性を大切にするには、先入観を持っているという事実を受け入れたり、交流の機会を持ち相手へのレッテルをはがすことなどが大切。旅の実際の出会いを通して、少し立ち止まって問題を多角的に見つめることで、そんな気づきも共有しました。

【南米区間】自分の行動が、世界とつながっている

世界を変えるには、まずは自分から ― 2016年冬期 地球大学報告 ゼミでの学びから貧困と差別について考えた発表会。差別が起きるメカニズムから、理解を生むステップを自分たちで考えました。
「物売りの子どもに、どうしてあげたらよかったんだろう・・・」
アフリカ区間での寄港地を振り返っていると、多くの参加者から湧いてきた貧困に対しての疑問。その体験を経て、南米区間では、ブラジルの「ファベーラ」と呼ばれるスラムを長年取材されているフリージャーナリスト・下郷さとみさんを講師にお招きし、数字で表せない貧困について考えました。

ワールドカップや新大統領の就任など、世界的な情勢が貧困層へもたらす影響や、食糧の値下げ競争のためにアマゾンの熱帯雨林が破壊されている実態から、貧困を自分たちなりに定義づけ、日本とファベーラの貧困像を描いてみます。一方で、住民のエンパワメントを通して犯罪率を劇的に減らしたファベーラの実例を学びながら、貧困が生まれる原因と解決のキーワードを考えました。

アフリカ・南米と、時に苦しくなるような差別や貧困の現状と出会い、「世界の問題は繋がっている」ということを強く体感しはじめた受講生たちは、洋上ではじめての発表会「地球大学ってなんだ?~私たちが考える貧困・差別~」を行いました。受講生以外にも地球大学の学びを体感してほしいという思いで、ステレオタイプや差別をわかりやすく描いた寸劇や、貧困にまつわる世界の問題のつながりを参加者とともに考えるワークなど、工夫を凝らした内容が印象的でした。

【南極・太平洋区間】学びを動きへ!持続可能な社会をつくるために

世界を変えるには、まずは自分から ― 2016年冬期 地球大学報告 アースデイでは、ソーヤー海さんに教えてもらった「ギフト経済」を実践したフリーマーケットも開催。
船は南米大陸を南下しながら、地球最後の秘境・どこの国にも属さない地、南極へ。青と白の世界で出会ったのは、雄大な自然に生きる海の生き物たちです。大自然を体感しながら、気候変動や海面上昇の影響で美しい自然の姿が変わり続けていることを学んだ受講生は、自分の暮らしが地球環境に影響していることを実感し、これからの生き方を問う大きなきっかけとなりました。

南極を後にし、日本へと舵を取った船内では、これまでの学びを発信したり、それぞれに関心を持った問題について積極的に関わる受講生の姿が目立ちました。

ゼミでは共生革命家・ソーヤー海さんによる非暴力コニュニケーションやパーマカルチャー、ギフトエコノミー、システム思考、ファシリテーションといった、社会を変えるために必要な考え方とスキルを実践的に学び、すべての命が大切にされる社会づくりについて考えました。

また、平和や地球との共存を考える目的で開催したイベント「アースデイ~希望の種をまく日~」では受講生が実行委員となり、地球一周で訪れた交流・検証ツアーをSDGsと関連づけて考えるワークや、ドキュメンタリー上映、瞑想、フェアトレードカフェ、ギフトフリーマーケット、理想の未来を描くワークなど、一日を通して多くの参加型企画を行いました。

地球大学最後の発表会は、地球との繋がりを自分たちの暮らしに落とし込み、エシカルファッションに着目した受講生たちが主催した「All about fashion」という企画です。世界各国で出会ったファッションにまつわる多様な文化を紹介するとともに、倫理的で持続可能なファッションについて発表。この企画のディレクターを務めた受講生は、貧困や環境問題を解消する手段として、身近なファッションを軸に発信していきたいと下船後も活動を続けています。

【船旅を終えて】これからも学び伝え続けたい

世界を変えるには、まずは自分から ― 2016年冬期 地球大学報告 
船旅を終えた受講生たちは、在学する大学で報告会を行ったり、船旅で関心を持った戦争の歴史について学ぶため日本各地を巡ったり、日本で開催されるイベントのボランティアをしたりと、積極的に活動を続けています。

以下に、受講生の感想をいくつか掲載します。

■世界の問題に、自分ができること・・・吸収し発信しつづけたい!
「自分の人生を使って、少しでも世界の困ってる人の役に立ちたい!でも一筋縄では解決できない問題に対して、具体的にどうしたらいいのか分からない・・・そもそもそんな思いを共有出来る人が周りにいない・・・そんな自分の進むべき道が見えるかも!と受講を決めました。講師の方の視点や、仲間たちの意見、そして自分自身も発言でき、たくさんのことを吸収できました。これからもインプットとアウトプットを続けていきたいと思っています」(愛知県より参加、19歳)

■世界の問題は、私たちの生活にも繋がっていると体感
「私は大学で国際関係を学びましたが、他の国で起きている問題は日本と関係のないものと思っていました。しかし、地球大学を受講し、世界の問題はすべて繋がっており、それは私たちの生活にも根付いていることを痛感しました。南米ブラジルの貧困をテーマにしたワークショップなどを通して、格差の実態は日本や他国でも同じような構造が当てはまるということを学びました。頭で分かったというより、”体で体感した”学びの体験ができました」(埼玉県から参加、24歳)

■人前で話すのが大の苦手だったけど…
「地球大学に参加して、成長したことは、自分の気持ちを人前で伝えるようになった事。今までの私は、みんなの前で何か発言するのは、大の苦手。そんな私が自分の気持ちを言葉にするようになったのは、周りの自分の気持ちをきちんと言葉にしている地球大学生に憧れ、彼らの言葉によって、新たな物の考え方を得たり、より深く考えることができたから。これからも、いろいろな人の声に耳を傾け、現場に行って自分が何を感じたかを伝え続けたいと思う」(岡山県より参加、26歳)

■もっともっと学びたい!という意欲が湧いた
「ワークショップやディスカッションなど、日本ではあまり馴染みのない学び方を経験できた。学んでいくうちに、自分が今まで関心がなかったことも面白く学ぶことができ、もっともっと学びたい!と関心や意欲を持つようになったことが大きな変化だった」(千葉県より参加、24歳)

■問題解決に向けての一歩を、ともに考えることができた
「ただ世界一周しただけでなく、様々な国にある歴史、実情に触れることができたのは他で得られない価値観だと思う。特に印象的だったのは、南米における独裁政治の歴史と、それらに立ち向かう市民の活動について直接触れることができたこと。そこから日本の問題を考えたりと、地球大学生とはいつもお互いの意見を伝え合いながら、問題解決に向けての一歩を考えることができてよかったと思う」(群馬県より参加、29歳)

ゼミにご協力頂いた水先案内人の皆様(順不同)

・莫邦富さん(ジャーナリスト・作家)
・チャールズ・マクジルトンさん(セカンドハーベストジャパンCEO)
・加藤直邦さん(ガイド、ナチュラリスト)
・バオバオ・チャンさん、ティム・コールさん(音楽プロデューサー、物語作家)
・ノンディエボ・シャバララさん(Incredible Tours&Travel創設者)
・下郷さとみさん(フリージャーナリスト)
・アルトゥーロ・メヒアさん(「アレナ・イ・エステラス」創設メンバー)
・ソーヤー海さん(共生革命家、東京アーバンパーマカルチャー主宰)

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