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第92回地球一周の船旅が帰港 ー 人々の心を動かした、おりづるプロジェクトを終えて

第92回地球一周の船旅が帰港 ー 人々の心を動かした、おりづるプロジェクトを終えて
オーシャンドリーム号を背に記念撮影。
2016年11月29日、第92回ピースボートで行われた第9回「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」に参加した被爆者5名、被爆二世1名、継承者1名、ユース2名が横浜港に帰着。「世代と国境をこえた継承――核兵器の禁止へ」をテーマに、13カ国17都市で行った被爆証言活動を記者会見で報告しました。
オーシャンドリーム号を背に記念撮影。
2016年11月29日、第92回ピースボートで行われた第9回「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」に参加した被爆者5名、被爆二世1名、継承者1名、ユース2名が横浜港に帰着。「世代と国境をこえた継承――核兵器の禁止へ」をテーマに、13カ国17都市で行った被爆証言活動を記者会見で報告しました。

「世代と国境をこえた継承――核兵器の禁止へ」

第92回地球一周の船旅が帰港 ー 人々の心を動かした、おりづるプロジェクトを終えて
晴れ晴れとした表情でターミナルに到着。坂下紀子さん(右)、森川高明さん(左)
2008年から始まり今回で9回目となった、おりづるプロジェクト「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」。今回は、核廃絶へ向けた被爆者の思いの継承者という枠組みを加えて、寄港地での証言と船の中での継承活動を行いました。今回のハイライトは、10月27日の国連での核兵器禁止条約の交渉開始決議に先駆けて、次の寄港地で多くの政府に面会し核廃絶へ向けた働きかけを行ったことです。

・マレーシアの外務省多国間問題事務次官と面会。
・ギリシャの外務副大臣と面会。国会で全ての党の代表の前で証言を行う。
・イギリスの国会議事堂で上院議員に向けて証言と意見交換を行う。
・ベルギーの外務省軍縮担当者と面会。
・オランダの外務大臣と面会。また、各党の代表者に向けて証言を行う。
・国連第一委員会のサイドイベントで「軍縮における被爆者と若者の役割」を議論した。
・キューバで国家評議会第一副議長と面会。
・ヒバクシャ国際署名を広く呼びかけ、世界の都市及び船内において約500筆集めた。

また、市長、州知事、学校、平和団体などの受入れのもと、多くの人々に核廃絶への連帯を呼びかけました。

今回のテーマ「世代と国境をこえた継承――核兵器の禁止へ」での活動を3人の被爆者・継承者が報告しました。

政治の山を動かすことができた

第92回地球一周の船旅が帰港 ー 人々の心を動かした、おりづるプロジェクトを終えて
森川高明さん(中央)6歳の時に広島で被爆。
◆被爆者 森川 高明さん

今回、ギリシャ、イギリス、ベルギー、オランダで政府機関に証言し、直接話をすることができました。
その際には次の4つのポイントを強調しました。

1、2006年に出された国民保護計画は災害や核攻撃モデルに対して地方はどう市民を守れるのか。本当に市民を守るには、核を廃絶しなければならない。
2、近年の国家の安全保障は合理性を失っている。
3、戦争をするということは最悪のことで、人権を侵している。
4、国の安全保障が人間の安全保障を上回るという概念を変えるべき。

このようなポイントで核兵器廃絶を働きかけました。国連の核兵器禁止条約の交渉開始決議以前に会うことができた政府、例えばオランダでは、もともと決議に「反対」だった態度が「棄権」と変わった時は、今回の訪問も含め、これまでの先人たちの運動の結果、政治の山を動かしたという手応えを感じました。

継承者としての難しさ、使命

第92回地球一周の船旅が帰港 ー 人々の心を動かした、おりづるプロジェクトを終えて
東野さん(手前)。母と祖母が広島で被爆。
◆被爆二世・継承者 東野真里子さん

二世として自分の体験を話すことを、ヒバクシャの方々がどのように感じているのか。私の話は母や祖母から聞いた話、それよりも実際に体験したヒバクシャの方々の話の方が求められているのではないかと悩むこともありました。

しかし、オランダ・ハーグの国際司法裁判所で、マーシャル諸島が核保有国を「国際司法上の核軍縮義務に違反している」として提訴した裁判を傍聴し、裁判長の一票により敗訴した様子をみて、1人の決断の重要性を再確認。今を生きる私の言葉を使って伝えなければいけないと感じました。

「心こそ大切なれ」これは、常に私の中で繰り返してきた言葉です。

1人1人の心を動かすことが、核のない世界を作ること。今は、これからどのように活動を展開していくか、地球一周で得た経験と想いを次につなげる方法を考えています。

事実を伝えるだけでは不十分

第92回地球一周の船旅が帰港 ー 人々の心を動かした、おりづるプロジェクトを終えて
寒川さん。船内では若者たちの問題意識を高めるため連続講座やゼミの運営を行う。
◆ユース非核特使 寒川友貴さん

クルーズ中は被爆証言のサポート、若者に関心を持ってもらうことを常に行ってきました。特に若者を巻き込むことにあたって、事実だけを伝えるのは不十分であり、「広島・長崎の悲劇を2度と繰り返さない」という被爆者の”思い”を伝えることにより継承することができると考えるようになりました。さらに、継承していく同世代から同世代へ伝える必要があると気づきました。

また、8月6日、8月9日に起きた事実を知るだけはなく、何故、原爆が投下されたのか、そこでどんなことが起きたのか、そして現在核兵器を巡っては何が起きているのかという、過去、現在、未来を考えるような教育が必要不可欠であると感じました。

核兵器禁止条約 日本は「反対」

核兵器禁止条約へ向けた交渉開始決議において、日本はもともとは「棄権」だった態度を「反対」へと後退させました。理由は、「核兵器国と非核兵器国の亀裂を深め、核兵器のない世界の実現が遠のく」とのことです。しかしながら、同じく核の傘に守られていると言われるオランダは、「反対」から「棄権」に投票したという事実もあります。

1人1人の想いが大きなうねりを作る。平均年齢80歳の広島・長崎の被爆者が始めた「ヒバクシャ国際署名」は、今年8月から現在までに56万筆が集まり、さらに数は増えています。今後も、様々な手法で「おりづるプロジェクト」は核兵器廃絶に向け、被爆者の想いを伝え続けます。

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