10万人のストリートチルドレン シェルターとしての学校の取り組み ―ムンバイ

プロジェクト:UPA国際協力プロジェクト 寄港地エリア:アジア クルーズ: 第88回 地球一周の船旅
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10万人のストリートチルドレン シェルターとしての学校の取り組み ―ムンバイ地域に暮らすストリートチルドレンの生活を支援するグラント・ロード・センターを訪れたピースボート参加者
第88回ピースボートで訪れたインド(ムンバイ)での交流プログラムの様子をお伝えします。10万人と言われるストリートチルドレンを抱えるムンバイでの取り組みを見てきました。

最も裕福な人と最も貧しい人が暮らす街

10万人のストリートチルドレン シェルターとしての学校の取り組み ―ムンバイ教師のマニシャ・パティルさんによりインド伝統の歓迎を受けるピースボート参加者
ムンバイには2つの顔があります。ダウンタウン周辺には、イギリス植民地時代に建てられたヴィクトリア様式の行政施設やビジネスオフィス、銀行などが整然と並行しています。

大通りを少し離れるとムンバイのもう1つの顔が見えてきます。そこには路上で暮らす家族や、1日の食費を稼ぐために物売りをしながら生活する子どもたちがいます。

ツアー参加者は、朝の通勤ラッシュを通り抜けながら、案内人の説明を聞きました。「ムンバイという場所は最も裕福な人と最も貧しい人が共に暮らす街です」。世界銀行の調べによると、ムンバイに暮らす25~30%の人々は路上での生活を余儀なくされています。そしてその中の約10万人は子どもだといわれています。彼らがどのような生活をしているのでしょうか?

ストリートチルドレンのために活動しているコープ・インディア(CORP India)という団体を訪れました。ここは1977年から子ども、女性、そして年配者の支援を続けています。当初は3人のスタッフによってムンバイのダルビというスラム街で始められました。それが今では13のスラム街に20もの施設を持つほどの広いネットワークへと成長しました。団体についてより知識を深めるため参加者は施設の1つに迎えられました。

教育、栄養、健康の3つの基本的ニーズ

10万人のストリートチルドレン シェルターとしての学校の取り組み ―ムンバイ中庭で子供たちと遊ぶ参加者
グラント・ロード・センターはその地域に住む多くのストリートチルドレンを支援するため2年前に開設されました。保育園のようにも見えるこの施設には、朝9時から約60名の子供が集まり、授業を受け、お昼を食べ、夕方6時までには家に帰ります。

しかし生徒の「家」とは夜に家族が公共の場につくる小さな小屋や屋根であり、朝には警察に取り払われないように片付けてしまうものです。彼らは路地に住み、コンクリートの上で夜を過ごします。1日2回の食事が当たり前で、それもレストランや列車の弁当の残飯でしかありません。

この施設は教育、栄養、健康の3つの基本的ニーズに焦点を当てて活動しています。コープ・インディアのボランティアスタッフとして3年以上働き、このグラント・ロード・センターを共に築き上げたセシリア・ドッチさんによると、子どもたちがこの施設に着いてまず最初にすることは、シャワーを浴びることです。

シャワー後は清潔な服に着替え、学校のプログラムを受けます。一日の流れは一般的な学校と同じです。授業があり、美術のプロジェクトがあり、施設の中心にある広場ではゲームもします。

子どもたちとの交流

10万人のストリートチルドレン シェルターとしての学校の取り組み ―ムンバイマティル先生によるインドの伝統的な砂を使って描くデザイン。一つ一つの形に意味が込められており、例えば中心の赤は真っ赤な太陽、外枠の白は聖なる牛の蹄を表している。
センターを訪れている間、ピースボート参加者はセンターのスタッフやボランティアスタッフらから団体について学び、子どもたちと昼食を食べ、遊び、おしゃべりをして過ごしました。日本文化は子どもたちにとって珍しいものもある一方で、有名人気キャラクターであるドラえもんはインドでもよく知られていました。

参加者はドラえもんのお面をかぶり、日本のことやインドまでの旅について子どもたちに紹介しました。遊び時間には折り紙や習字、だるまさんが転んだなど日本文化を教えながら交流しました。

施設側から訪問のお礼に、ヒンドゥ教の祝福、タリカ(目と目の間に赤いパウダーを付ける儀式)、ヒンドゥ教のお祭り、インドの伝統的なブレスレットのプレゼントがありました。施設のスタッフさんたちは参加者に砂絵のアートにも挑戦させてくれました。

家族への説得

10万人のストリートチルドレン シェルターとしての学校の取り組み ―ムンバイ子供たちに紙飛行機の折り方を教えるピースボート参加者
コープ・インディアのスタッフ、ボランティアスタッフの仕事は、センター内にとどまりません。生徒の送り迎えをしたり、路上で生活をする元生徒やその家族への訪問も行っています。

ここで働く多くの先生やスタッフは同じ地域に住み、人々を勇気づけ、生きるための力を引き出すことが彼らのコミュニティーへの貢献に繋がると信じています。「コミュニティーはとても大切です。同じコミュニティーに住む人を地域で見かけると子どもたちはより安心します」とドッチさんは言います。

スタッフの仕事で一番時間を要することは、子どもたちの家族への説得です。貧しい家庭のほとんどは子どもたちに少しでも家計の支えになるように働いてもらいたいと思っているため、施設へ通わせることに抵抗します。

「これはとても、とても難しいプロセスにもなります」と相談員のソナルさんは言います。多くの家庭は大家族であり、センターに通う子どもたちも平均4~5人の兄弟がいます。また、逆に家族がいない子どもたちもいます。

ムンバイの2つの顔

10万人のストリートチルドレン シェルターとしての学校の取り組み ―ムンバイセンターのスタッフに文房具などの入った支援物資を贈呈する
「電車に乗ってムンバイに来る人、ムンバイを出て行く人は毎日おおよそ500万人います。実はこの中には家出をした子どもたちの数も含まれているのです」とドッチさんは言いました。

彼らは到着した駅の中やその周辺に住み始めます。そしてゴミを拾ってブラックマーケットのリサイクル店で売り、道端で物乞いをして生きていくのです。

センターがこのような子どもを見つけたとき、または安全な家庭環境におかれていない子どもであるということがわかった場合、彼らにはCORPのシェルター・ホーム・プログラムに入ってもらいます。このプロジェクトでは男女に分けて2つの家を運営しています。どちらにも親役のスタッフが彼らと共に住みます。

コープ・インディアの活動は地域の学校とパートナー関係を結び、トレーニングを行うこともあります。「最も重要なのは教育です」とドッチさんは言います。15歳になりプログラムから外れると、センターは彼らが学校に通うことができるよう家賃の支払いを支援します。

ドッチさんによると、コープ・インディアは他の多くのインドのNGOと同じようにインド政府からの支援を受けていません。団体の活動のほとんどが海外、スイスやイタリアなどの支援によって行われています。

富裕と貧困が隣り合わせのムンバイで、今日もこのグランド・ロード・センターは成長を続けています。「この街はいつでも2つの顔があります。もしあなたがその両方を見ることが出来なければ、ムンバイを理解することは出来ないでしょう」とドッチさんは参加者に伝えました。

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