先住民の知恵を引き継ぐ ガビさんとの農業体験から学ぶ豊かな暮らしとは ―タヒチ

寄港地エリア:太平洋 クルーズ: 第88回 地球一周の船旅
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先住民の知恵を引き継ぐ ガビさんとの農業体験から学ぶ豊かな暮らしとは ―タヒチタロイモ畑で説明をするガビさん。ピースボートにとって太平洋の島々の大切な友人の1人です。
第88回ピースボートで訪れたタヒチでの交流プログラムの様子をお伝えします。溢れんばかりの笑顔で出迎えてくれたガビさん。彼の生き方からは、私たちは多くを学びました。

裸足のガビ

先住民の知恵を引き継ぐ ガビさんとの農業体験から学ぶ豊かな暮らしとは ―タヒチココナッツの雄と雌の説明を受ける。雄のココナッツが20個の実をやっと付けるのに対し、雌のココナッツは300もの実を付ける。
タヒチ島の首都パペーテにある港から南東に1時間ほど車を進めると、タラバオという街があります。その町の有名人、ガブリエル・テティアラヒさん(通称:ガビ)は、農家であり、活動家であり、そして20年に渡りピースボートに協力してくれている長年の友人です。

ガビさんは、太平洋の核実験、植民地支配やタヒチでの独立運動、先住民族の歴史や権利についての講座を行うため、ピースボートに過去何度も乗船してくれています。

現地訪問ツアーでは、自らの農園でピースボート参加者を受け入れ、先住民のマオヒの文化や、自然に敬意を払う大切さを教えています。ガビさんのトレードマークは「裸足」。どこへでも裸足で出かけるのです。「自らの身体で大地を感じなければ大切なことを見逃してしまう」というのがその理由です。

ガビさんが初めてピースボートと出会ったのは1995年でした。その年はフランスのシラク大統領が核実験の再開を決めた年でした。ピースボートは航海中に、各寄港地で核実験への抗議デモを行いました。航路には予定されていなかったタヒチへの寄港を実現するため、事前準備に訪れた際、ピースボートの代表とガビさんは出会いました。

ガビさんは以前からフランスの核実験への反対運動に参加し、反核NGO「ヒティ・タウ」(マオヒ語で「今立ち上がる時」という意味)を立ち上げ、先住民族の権利を訴えるために活動してきました。また、マオヒのリーダーや、ポリネシアの人々へ呼びかけ、1996年、フランスが南太平洋での核実験を停止するまで抗議活動の国際的リーダーを務めました。

ピースボートへの恩返し

先住民の知恵を引き継ぐ ガビさんとの農業体験から学ぶ豊かな暮らしとは ―タヒチ過去にピースボート参加者が植えたココナッツの木から、丸々と熟れた実を収穫する
ガビさんとピースボートとの友情関係は、核実験の停止後も深まっていきました。農園では過去のピースボート参加者が植えた約200本のココナッツやタロイモ畑が山の一面を覆っています。

ガビさんは、農園でピースボート参加者を受け入れることが、自分が核実験の抗議運動を行っていた時に手伝ってもらったピースボートへの恩返しだと考えています。

マオヒの文化では「もらったら返す」という考え方が大切にされています。「彼ら(ピースボート)にサポートしてもらったので、今回私たちが彼らのために何かをしてあげる番だ」とガビさんは話します。始めてから20年が経ち、ココナッツがどんどん成長しました。ガビさんは農園の反対側でさらに500本のココナッツを植えようとしています。

「ヒティ・タウ」ではココナッツやタロイモ以外にも、バナナ、アボカド、マンゴー、パンの木、グレープフルーツ、パパイヤなどもガビさんやボランティアたち、またマオヒの文化について農園に学びに来る人々の手によって栽培されています。

経済的な自立を取り戻す

先住民の知恵を引き継ぐ ガビさんとの農業体験から学ぶ豊かな暮らしとは ―タヒチタロイモをココナッツの近くに植える参加者。「ココナッツとタロイモはいつも一緒じゃなきゃだめだ、ココナッツの葉が天然の肥料となるから」とガビが説明しました。
1996年に核実験が停止された後、核実験反対運動に参加してきた「ヒティ・タウ」は、先住民族の権利を守ることや、タヒチ人が自然と共存して文化を復活させることに焦点を当てて活動してきました。

タヒチでは、フランスの植民地とされた後に核実験が行われたように、反対運動と国の独立性を考える事は非常に重要であるとガビさんは言います。そのためには、農業を通して経済的な自立を取り戻す必要があります。

「私にとって農業というのは、コミュニティーを作り、文化を再発見し、自然の素晴らしさを讃えること」。農村で生まれたガビさんは伝統的な農法を教わりましたが、植民地支配下のタヒチではその知恵が継承されることはありませんでした。もう一度タヒチの人々に知恵を教えたら、自然の恩恵に気づき、敬意の気持ちを取り戻すかもしれない。

「バナナ農家で、オスのバナナの木とメスのバナナの木の違いを知っている人は少ない。メスはオスよりも格段に大きな房を作るのに。違いを知ることが大事なんだ」とガビさんは話します。ガビさん自身は先住民族の伝統農法を利用して作った巨大なバナナの房を栽培し、コンテストで何度も賞を受賞しています。

ガビさんは若者を農園で受け入れ、先祖が行っていた農法を教えることで、タヒチ人であることを誇りに思う人を増やしたいと思っています。「新しい世代にも自分たちのルーツに戻れる機会を提供している。歴史だけでなく、食も大事だ。」

ココナッツ脳を持って

先住民の知恵を引き継ぐ ガビさんとの農業体験から学ぶ豊かな暮らしとは ―タヒチ自分と自然をもっと信じて「ココナッツ脳」を育てて欲しい。ガビさんは参加者を励ましました。
ガビさんは月の満ち欠けと連動した伝統農法を、ピースボートの参加者に教えました。ココナッツやタロイモは理想的な時期に植えると、望ましい形と味を実現することができると言います。その理由を尋ねるとガビさんは、茶目っ気たっぷりに答えました。「私の鼻は頭の後ろではなく前にあるだろう。神様に聞きなさい」。

ガビさんの指示に従い3人の年長者が選ばれ、小さなココナッツの木を一本ずつ山の中腹に植えました。他の参加者は、タロイモの植え付けを手伝いました。

ガビさんがピースボートの参加者に持ち帰って欲しかったのは、困難な状況の中で解決策を見出すことができる能力です。ガビさんはこれを「ココナッツ脳」と呼んでいます。「スーパーマーケット脳は捨てなさい。私たちのココナッツ脳を持つんだ」。「ココナッツ脳」を持つというのは、自然の恵みを使う知恵を持って生きるということです。

現在、タヒチの人は食料を自給せずに、スーパーマーケットなど人間が作りだしたものだけに頼って生きていて、自分たちのルーツが分からなくなっているとガビさんは指摘します。

「ヒティ・タウ」では活動の一環として、自然に関する知識や、食の自立方法を教えています。食料はもちろんのこと、堆肥や殺虫剤、虫除けなども知識さえあれば全て、自然から作ることができます。

農園から出る前、ガビさんは全ての参加者へ向かって呼びかけました。「今日植えたココナッツやタロイモを見に来たい、農園で働きたい、あるいは単純に挨拶をしたい人はいつでも帰ってきなさい。ここに自分の家があるからね。あなたのココナッツ農園がここにあるんだよ」と。

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